【2月17日 AFP】インド北部ウッタルプラデシュ州プラヤーグラージ(アラハバード)で1月13日から今月26日まで、世界最大の巡礼者の集会とされるヒンズー教の祭り「クンブメーラ」が開催されている。主催者は、6週間で4億人以上の巡礼者が訪れると予測し、群衆の圧死事故を最小限に抑えるために人工知能(AI)を導入している。

当局は、テクノロジーを駆使することで群衆の密度を管理し、事故の回避につなげられると考えている。

警察は、会場および広大な宿泊エリアに通じる道路に約300台のカメラを設置。さらに、カメラを搭載したドローンも飛ばしているという。

群衆を監視し、指揮・統制するための管制施設は、ガンジス川とヤムナ川の合流点にある聖地から程近い場所に置かれている。ここで、警察やエンジニアがモニターを監視し、状況を把握している。

技術責任者を務める警察幹部アミット・クマル氏は、「ここからクンブメーラ全体をチェックできる」と述べ、映像をAIのアルゴリズムで解析し、鉄道やバスの運行データと照合することで、十数キロにわたる群衆の大まかな人数を把握しているとAFPに説明した。

「AIを使って、人の流れや人が流入する入り口で群衆密度を追跡し、それらのデータを基に必要な情報を推定する」

また、群衆が過密状態になり、安全上のリスクが生じると警報が鳴る仕組みになっているという。

■米国とカナダの総人口を上回る参加者

主催者の予想では、今年の祭りに参加する延べ人数は、米国とカナダの総人口を上回るとされ、公式推定によると、初日の朝には約600万人が聖地の川で沐浴(もくよく)した。

クマル氏は、これほどの人数が集まると、一定の群衆事故は避けられないと言う。

「欧米ではパーソナルスペース(対人距離)が比較的広く、1平方フィート(約930平方センチ)あたり3人が標準となっている。しかしインドでは、その数倍の密度でも許容できる」とし、インドのAI群衆制御システムが警報を発する限界値が他国のシステムより高い理由を説明した。

クマル氏は「参加者全員が霊的な務めを果たし、無事に帰宅できることを願っている」と語った。

しかし、今年も群衆事故は発生している。事故が起きた1月29日当初、警察は負傷者についてのみ言及していたが、翌30日には少なくとも30人が死亡し、数十人が負傷したことを認めた。

事故現場に居合わせた人々の中には、実際の死者数は警察の発表より多いのではないかとする声も上がっている。

また2月15日には、首都ニューデリーの駅でクンブメーラに向かう列車に人々が殺到し、少なくとも18人が死亡している。多くは女性と子どもだった。(c)AFP