【6月11日 AFP】10日にイスラム武装勢力に制圧されたイラク第2の都市モスル(Mosul)から、これまでに同市の人口200万人の4分の1に相当する約50万人が脱出したとみられることが、国際移住機関(International Organisation for MigrationIOM)の発表により分かった。

 イスラム教スンニ派(Sunni)の過激派「イラク・レバントのイスラム国(Islamic State of Iraq and the LevantISIL)」が率いる武装勢力によるモスル制圧は、シーア派(Shiite)主導のイラク政府に大打撃を与えている。武装勢力は10日、ニナワ(Nineveh)州の州都であるモスルとその周辺地域、さらにキルクーク(Kirkuk)州やサラハディン(Salaheddin)州の一部も掌握した。

 モスルでは自家用車などに乗り込んで脱出しようとする多数の住民が、市外の検問所に押し寄せている。スイス・ジュネーブ(Geneva)に本部があるIOMは現地からの情報として、イスラム武装勢力の攻撃によりモスルは完全制圧され、「同市内外の50万人を超える人々が避難を余儀なくされている」と発表した。

 さらに政府高官によると、武装勢力は11日にサラハディン州の都市バイジ(Baiji)も制圧しようとしたが、イラク軍と警察の増派部隊が到着したため撤退したという。武装勢力はモスルの銀行にあった現金や軍施設にあった武器類を奪い、また刑務所から脱走した受刑者が加わり、さらに強化されるとの見方もある。

 こうした事態に対し、イラクのヌーリ・マリキ(Nuri al-Maliki)首相は国民議会に国家非常事態宣言の発令を要請した。

 モスル東部バシカ(Bashiqa)地区の目撃者は11日、電話取材に応え、軍服や全身黒づくめの服を着て武装した男たちが、モスルの庁舎や銀行の警備に就いており、スピーカーを通じて公務員に職場に戻るよう命じていたと語った。この自営業の30歳の男性は「危ないので5日から店は開けていない」と述べた。(c)AFP