■「感情を押し殺し、時がたってから問題が顕在化」

 ウクライナと同じく旧ソ連構成国のモルドバは、人口わずか260万人の貧困国でありながら、現在10万人以上のウクライナ難民を受け入れ、ドクターズ・オブ・ザ・ワールドをはじめ、約40の人道団体から支援を受けている。

 米国出身でコーディネーターの代表を務めるリズ・ディバイン(Liz Devine)氏は難民のメンタルヘルスについて、「私たちが支援を提供できる重要な分野だ」と言う。

「メンタルヘルスの問題は、初めから出てくるわけではない。最初のうちはパニックや不安のような形で現れる」「いろいろな感情を押し殺し、時がたってから、さまざまな形で問題が顕在化することもある」と説明した。

 ディバイン氏によると、モルドバにいるウクライナ難民の86%を女性と子どもが占める。その他の難民に比べるとその割合は極めて高い。

 夫や兄弟、息子は戦争に参加するか、戦争を支援するためにウクライナに残り、避難してきた女性たちは孤独感を抱くことが多いという。

■グループセッションやアートセラピー

 エレナ・バビコさん(23)は、「グループセッションで新しい方法を試した」「参加者同士で一緒に泣きながら問題を話し合った」と語った。

「他の人の話を聴くと、自分だけではないことが分かり、気持ちが楽になる」と言う。

 今は、グループセラピーを受けたNGOに協力し、ウクライナ難民のサポートをするようになった。

 オデーサ(Odesa)出身の弁護士で、現在はモルドバの首都キシナウで20歳の娘と暮らしているラリッサ・デムチェンコさんの場合は、アートセラピーが非常に役立った。

「ウクライナに戻って、苦しんでいる人たちにアートセラピーを行うのが目標」だという。

 モルドバにこれまで避難してきたウクライナ人は計68万6000人。そのうちの多くは他国に移るか、帰国した。だが、モルドバにとどまるしかない人は、戦争が長引くにつれ、新たな問題に直面している。

 ドクターズ・オブ・ザ・ワールドの専門家は、先が見えないことに疲弊し、最も弱い立場にある人々が「慢性的なストレス状態」に置かれる可能性があると指摘している。(c)AFP/Sabine COLPART / Chloe ROUVEYROLLES-BAZIRE