米メキシコ国境の壁建設、地域の生態系にも影響
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【4月10日 AFP】米国のドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が計画しているメキシコ国境沿いの壁建設は、移民だけでなく、メキシコ北部に生息するジャガーやオオツノヒツジ、シカに似たソノラプロングホーンなど、野生動物にも大きな影響を与えると専門家らが警鐘を鳴らしている──。
国境沿いには、両国によって定められた自然保護区があり、ここを野生動物たちが自由に行き来している。しかし、野生動物保護団体らは、トランプ大統領が違法な越境行為を防ぐ目的で進めようとしている壁の建設によって、これらの生き物が絶滅への道をたどるのではとの懸念を示している。
国境沿いにある自然保護区には、米アリゾナ(Arizona)州のカベサ・プリエタ国立野生動物保護区(Cabeza Prieta National Wildlife Refuge)と、メキシコ・ソノラ(Sonora)州のピナカテ火山とアルタル大砂漠生物圏保存地域(Pinacate and Gran Altar Desert)がある。メキシコに位置する後者は、世界遺産にも登録されている。
これら2国間の自然保護地域を隔てているのは、動物が通れる程度のすき間が設けられた簡単な柵だけだ。
■水と餌
最高気温が55度に達する乾燥した砂漠では、雨が降ることはめったにない。ここでは、水や餌、日陰を求め、動物たちは長時間にわたって歩き続けなければならない。
また、一部の地域で干ばつや疫病が発生した際には、個体数の減少を食い止め、繁殖を目的に移動する必要が生じる。
環境問題に詳しい、米アリゾナ大学(University of Arizona)のアーロン・フレッシ(Aaron Flesch)氏は、「生息地の真ん中に巨大な壁を築くことで、一部の生物種は移動を妨げられて新たなコロニーを構築することが不可能となり、個体数の回復が見込めなくなる」と指摘している。