■ロシアが「トランプ氏の勝利を支援」

 両紙による報道は、議会民主党が同党の選挙活動に対しロシアからどの程度の妨害があったのか情報を求める中で、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領が2016年大統領選の選挙期間中に発生した全てのサイバー攻撃についての徹底的な調査を、オバマ大統領の任期が終わる来年1月20日までに完了させるよう指示した後に行われたもの。

 ワシントン・ポストは当局者の話として、ロシア政府とつながりのある複数の人物が、民主党全国委員会(DNC)や民主党候補だったヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏陣営の選対本部長らからハッキングで盗み取った電子メールを内部告発サイト「ウィキリークス(WikiLeaks)」に渡していたと報道していた。

 ウィキリークスは大統領選の数か月前からハッキングされた電子メールを公表し続けており、クリントン前国務長官の選挙運動に打撃を与えた。

 同紙によると、ロシアの目的は米国の大統領選を妨害するだけでなく、トランプ氏を勝利させることにあったという。同紙は、先週、有力な上院議員に状況を説明した米政府高官の話として、「政府の情報機関はロシアの目的は特定の候補者を他の候補者よりも有利にすること、トランプ氏の当選を支援することだったと評価している」「これが一致した見解だ」と述べたと報道した。

 ワシントン・ポストが取材した複数の当局者によると、CIA局員は複数の情報源から得た証拠を基にして、ロシアの目的がトランプ氏当選にあったことは「かなり明白だ」と議員らに説明したという。

 ニューヨーク・タイムズによると、ハッカーの標的となったのは民主党だけではなかった。同紙はある米政権幹部の話として、ロシアは「民主党全国委員会と共和党全国委員会の両方をハッキングしたが、意図的に共和党側の情報は流出させなかった」と伝えた。

 同紙は、ロシアはいつトランプ氏の支援を開始したのかとの疑問を提起し、「ロシアの当初の目的がトランプ氏を支援することだったのかどうかは全く分かっていない。情報当局者やクリントン氏陣営の元関係者は、ロシアの当初の目的は単に選挙活動を妨害して、選挙の健全性に疑問を抱かせることにあったのではないかと考えている」と報道した。

 しかし米情報当局は、ロシア政府が、民主党から盗まれた電子メールの内容をウィキリークスに渡すよう特定の複数の人物に指示を出した証拠は持っていない。ウィキリークス創設者のジュリアン・アサンジ(Julian Assange)容疑者はロシア政府との関係を否定している。(c)AFP/Paul HANDLEY