【7月1日 AFP】主要キャスト全員に女性を配した今月公開の米映画『ゴーストバスターズ(Ghostbusters)』のリメーク版が、インターネット上で激しい批判にさらされている。これを受け、米映画業界の性差別問題が改めて取り沙汰されている。

 動画共有サイト「ユーチューブ(YouTube)」に公開された予告編第1弾には、約90万件もの「低評価」が集まり、映画の予告編としては同サイト史上最も厳しい批判を受けた。ソーシャルメディア上では、ポール・フェイグ(Paul Feig)監督やキャスト陣に対し、殺害予告や女性蔑視のコメントが容赦なく向けられた。

 あるツイッター(Twitter)ユーザーは「フェミナチ (Feminazi、急進的フェミニストに対する蔑称)を喜ばせるために作られた駄作」と投稿。新作はこういった暴言の集中砲火を浴びている。

 32年前に公開された元祖『ゴーストバスターズ』のキャストは男性ばかり。一方、そのリメーク版には、ケイト・マッキノン(Kate McKinnon)、メリッサ・マッカーシー(Melissa McCarthy)、レスリー・ジョーンズ(Leslie Jones)、クリステン・ウィグ(Kristen Wiig)という女優陣が起用された。監督は、ヒット映画『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン(Bridesmaids)』など女優を起用したヒット作で知られるフェイグ氏だ。

 フェイグ監督は最近、カリフォルニア(California)州南部にあるソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(Sony Pictures Entertainment)本社で開かれたプロデューサー会議で「これまでの2年間、人生のうちで誰も目にすることがないような最悪の女性嫌悪発言にさらされてきた」と明かした。「この猛攻撃にはただただ背筋が凍った」

 フェイグ氏は「われわれはこういう偏見に対して声を上げようと日々奮闘している。メディアでもいまだに『女性向け映画』と言われ続けている。これまで『女性ばかりのゴーストバスターズ』としか紹介されたことがない。頭にくる」といら立ちを隠さず、男性ばかりが出演していても批判されることはない、と反発した。

■「男の領域」

 サンディエゴ州立大学(San Diego State University)の「テレビ・映画業界の女性研究センター(Centre for the Study of Women in Television and Film)」のマーサ・ローゼン(Martha Lauzen)氏は、リメーク版『ゴーストバスターズ』への批判は、大型予算をかけたメジャー映画は「男の領域」だという考えが依然深く根付いていることの証しだと指摘している。

「こういう映画は昔から男性俳優の主演で男性が監督し、若い男性をターゲットに作られてきた」とローゼン氏。

 同氏が毎年行っている「ガラスの天井」ならぬ「セルロイドの天井(Celluloid Ceiling)」調査によると、2015年の国内映画興行収入トップ250作品のうち、女性の監督は9%、脚本家は11%しかいなかった。その連鎖反応は、深みがあり関心を引く女性の登場人物が少ないという形で表れている。