■つながらない電話回線

 ボコ・ハラムの攻勢が始まって今年で6年目。殺害された人々は昨年だけで推定4000~1万人とされるが、正確な数字は誰にも分からない。

 新しい攻撃があるたびに私たちは、返答が得られないと分かっていても、軍や政府に電話をかける。地元の軍関係者は、申し訳なさそうにコメントを禁じられていると説明し、首都アブジャ(Abuja)の防衛本部に問い合わせるよう勧めてくる。だが、本部に電話をかけても誰も出ないか、電源が切られていることすらある。メールを送っても返信はほとんどない。軍のツイッター(Twitter)アカウントを確認するよう言われることもあるが、更新はされていない。

 こうした中でボコ・ハラムの襲撃を報じるというのは、非常に複雑でストレスのたまる作業になる。まるでピースの大半が欠けたジグソーパズルを完成させるようなものだ。

 攻撃を受けたのがカノ(Kano)やマイドゥグリなどの都市なら、携帯回線が生きてさえいれば、まだ容易に取材活動ができる。だが、それでも公式発表では死者数が低く見積もられがちだ。記者が病院の遺体安置所に行って死体を数えるほかないこともある。

 昨年11月にボコ・ハラムがカノ中心部にあるモスクを攻撃した際には、AFP記者が実際にその手段を取った。遺体は94体だったが、後日、信頼できる救急当局の情報筋が死者は120人だと教えてくれた。負傷者が亡くなったのだろうか。真相は不明だが、その可能性は高い。

 ただ、襲撃はほぼ毎日のように起きている。事件が起こるたびに記者が死者数を数えるのは不可能だ。単純に時間が足りない。

■「要約」される事件

 なぜ、ナイジェリアは毎日トップニュース扱いにならないのか。バガ襲撃後も各地でボコ・ハラムの攻撃が相次ぐ中でそう疑問に思う人々もいるだろうが、その答えの1つが、ここにある。

 新たなボコ・ハラムの残虐行為がパリでのテロ事件を押しのけて世界のトップニュースにならない理由は、連日のように襲撃が起きているからというだけではない。確実性がまるで欠けているからだ。

 世の中はますます、整然とまとめられた情報の「パッケージ」を好むようになりつつある。分かりやすく整理され、逮捕の瞬間の写真が添付されていて、140文字で要約できたり、ハッシュタグがついていたりするものだ。

 ボコ・ハラムの襲撃をめぐる報道の場合、そんな完成された「全容」は存在しない。想像を絶する恐怖の断片が散乱する中、次の襲撃が起きる前に何とかして情報の穴を埋めようと努力することしかできない。(c)AFP/Phil Hazlewood


この記事は、AFP通信のナイジェリア・ラゴス支局長のPhil Hazlewoodが書いたコラムを翻訳したものです。