■完全まひは永久に消えない…のか?

 しかしこの研究はこれまでのものと異なる道筋をたどっており、脳と下肢の間の神経を再接続しなくても、まひ患者を動けるようにする方法が存在するとの考え方にのっとっている。

 この技術では、腰仙髄にある比較的自立した神経ネットワークに微弱な電気信号を与える。腰仙髄の神経ネットワークは、脳からの指示がなくても、体重を支えたり正しい足踏みをしたりするための命令に従わせることができる。

 最初の研究に参加したルイビル大のスーザン・ハルケマ(Susan Harkema)教授は「損傷後数年を経ている場合でも、完全まひ患者の随意運動の回復に劇的な効果を及ぼし得る根本的に新しい介入戦略の開発にわれわれは成功した」と述べ、「回復は不可能で完全まひは永久に消えないという見方には、見直しが迫られている」と続けた。

 この電極移植術は、リハビリ療法と並行して行われる。このリハビリ療法は、脊髄ネットワークに神経機能を習得・改善させるために必要な電気刺激量を時間とともに徐々に小さくすることを目的としている。

 なお被験者には、筋肉量や血圧の改善、疲労の軽減などのさまざまな副効用も同時にもたらされたという。

 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California Los AngelesUCLA)は声明を発表し、「研究の観察結果に基づくと、硬膜外刺激電極が持続的に進歩することで、完全脊髄損傷患者は将来、自分の力で体重を支え、バランスを保ち、足踏みに向けて努力することができるようになる可能性は大きい」と述べた。(c)AFP