【4月5日 AFP】ナチス・ドイツの共鳴者として知られるクロアチアの歌手が7月に同国で開催予定の野外コンサートで、チケットを50万枚以上売り上げた。チケット販売プラットフォーム「エントリオ」が3日夜、明らかにした。

「トンプソン」の芸名で知られるフォークロック界のスター、マルコ・ペルコビッチ(58)は、第2次世界大戦時の親ナチスのウスタシャ政権に共鳴しているとして、欧州の複数の国で公演を禁止されている。

エントリオはフェイスブックで、「7月5日土曜日、50万人以上が(ザグレブの)競馬場で(トンプソンによる)公演を楽しむことになる」と説明。人口380万人のクロアチアの首都ザグレブで開催されるこのコンサートのチケットは、1週間で完売したとしている。

トンプソンのコンサートではしばしばウスタシャのシンボルが表示され、特に人気のある曲に合わせてナチス式敬礼をするファンもいる。

トンプソンは1990年代のクロアチア紛争中に愛国歌で人気を博したが、こうした愛国歌に「物議を醸す要素は一切ない」と主張している。

クロアチアの親ナチスの過去が国内でタブー視されることは近年少なくなり、ウスタシャのシンボルの使用を認めなかったとして当局を批判する声も上がっている。

ウスタシャ政権は第2次世界大戦中、クロアチア国内の強制収容所で反ファシズムのクロアチア人、セルビア人、ユダヤ人、ロマ人ら数十万人を迫害・殺害した。

ユダヤ人の人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」はトンプソンが歌詞でジェノサイド(集団殺害)を美化していると非難し、トンプソンのコンサートでウスタシャのシンボルが表示されたのは、「偶然でも間違いでもない」と指摘した。

ウスタシャ政権率いる「クロアチア独立国」はナチスのかいらい国家だったが、現代の共鳴者はウスタシャ政権をクロアチア建国の父と見なしている。

エントリオによると、7月に競馬場で開催されるトンプソンのコンサートは、有料コンサートの観客動員数で世界最多を更新する見通し。英ロックバンド「ローリング・ストーンズ」は1988年に同会場で8万人を動員した。

今年1月には英ロックバンド「コールドプレイ」が2夜で22万3000人を動員し、21世紀のスタジアムコンサートの動員数で最多を更新した。

無料コンサートの動員数では、米歌手マドンナが2024年にブラジル・リオデジャネイロのコパカパーナビーチで記録した160万人が最多となっている。(c)AFP