トランプ流貿易計算式は「間違いだらけ」、経済学者も困惑
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【4月4日 AFP】貿易経済学者らは3日、ドナルド・トランプ米政権が貿易不均衡を測定し、世界中の貿易相手国すべてに罰を与えるのに使用する計算式に頭を悩ませた。
トランプ氏はホワイトハウスのローズガーデンで、中国や欧州のような大国・大経済圏から小国までさまざまな相手国に相互関税を課すことの理論的根拠を、図表を手に説明した。
だが、提示された数字は実際の関税率とはほど遠いものだった。
ラリー・サマーズ元財務長官はX(旧ツイッター)で、「これ(トランプ政権の計算式)は経済学にとって、生物学にとっての創造説、天文学にとっての占星術のようなものだ」と述べた。
トランプ氏が提示した図表では、中国は米国製品に67%の関税を課していることになっているが、世界貿易機関(WTO)のデータによると、中国が2024年に米国製品に課した平均関税率はわずか4.9%だ。
同様の違いは他でも見られ、トランプ政権は米国製品に課される関税率について、欧州連合(EU)は39%、インドは52%としていたが、WTOによると、それぞれ1.7%と6.2%だった。
政権当局者は、環境基準や「通貨操作と貿易障壁」など、関税以外の要素も考慮したと説明した。
米通商代表部は、計算に学術的な信頼性を持たせようとギリシャ文字を使った公式を発表したが、実際には関税率は要素として含まれていなかった。
トランプ氏の貿易哲学に従い、この公式は貿易赤字を不公平の根拠としている。
当局者は貿易赤字額を輸入額で割り、二国間の貿易赤字を解消するのに「必要な関税率」というものを決定した。
他に二つの変数として、輸入需要の価格弾力性と、輸入価格の弾力性も含まれていたが、それらは互いに打ち消し合うように設定されていた。
トランプ氏によると、政権はその後、「われわれは親切だから」という理由でその結果得られた数字を半分に減らし、米国が貿易黒字を維持している国々には一律10%の関税を課したと説明した。
ノーベル経済学賞を受賞した貿易経済学者で、トランプ氏を頻繁に批判しているポール・クルーグマン氏は自身のブログに、「このアプローチは間違いだらけで、どこから手を付けていいか分からない」と投稿した。
トランプ氏が貿易赤字に焦点を当てているのは、貿易赤字は外国での生産による米国の雇用喪失を示すという見解を反映しているが、これは第2次世界大戦後の経済原則に反するゼロサム思考だ。
トランプ氏の貿易赤字への執着は、米IT大手アップルのような企業が製品の90%を国外で製造しながら、米国に莫大(ばくだい)な富をもたらしているという世界最大の米国経済の複雑さを無視するものだとほとんどの経済学者は解釈している。(c)AFP