【2月28日 Peopleʼs Daily】湖南省(Hunan)長沙市(Changsha)のランドマーク・湘江(Xiangjiang River)の中州「オレンジ島(橘子洲、Orange Island)」は、中国5Aクラスの観光地だ。2021年から23年までに、オレンジ島の年間観光客受入能力は、延べ800万人から延べ1690万人まで増加した。

 有名な観光地のオレンジ島は、かつては大量の二酸化炭素排出源でもあった。そこで、地元政府では、この島の二酸化炭素排出量を体系的にマッピングし、風力や太陽光などクリーンエネルギーを電力供給源とするなど、「ゼロ・カーボン島」を目指す努力が重ねられている。そしてこのクリーンエネルギーの取り組みを、省全体に拡大しようとしている。

 湖南師範大学の教授で「湖南省双炭研究院」の所長の李科(Li Ke)氏は、オレンジ島の「ゼロ・カーボン」を実現するには、まず島の「カーボンフットプリント(CFP)」を把握する必要があるという。このためには、電力消費、ガソリンやディーゼル燃料からの排出、さらに観光客が排出する二酸化炭素も全て考慮する必要がある。島のCFP量を体系的に計算した結果、23年の同島の炭素排出の正味量は約5900トンになると推定された。

「中国の島における二酸化炭素排出削減の成功例は数多くあります。福建省(Fujian)莆田(Putian)市の湄洲島(Meizhou Island)や海南省(Hainan)の博鰲鎮(BoAo)にある東嶼島(Dongyu Island)はいずれも成功例ですが、オレンジ島の場合はそれらを単純に模倣することはできません」、李氏はこう指摘する。

 オレンジ島は島ではなく川の中州であり、細長い形状で面積も小さい。また、風力や太陽光エネルギー資源の面でも優位性はない。都市のランドマークで、5Aクラスの観光地でもあるため、大型の風力タービンや大規模なソーラーパネルを設置することは、現実的に難しいのだという。

 国家電網長沙電力供給公司の楊浩康(Yang Hongkang)副総経理は、グリーン電力だけを島に送電する以外には方法がないという。楊氏によれば、これまでオレンジ島で使用される電力は通常の電力網から供給され、全てがグリーン電力だったわけではない。

 それではオレンジ島に送るグリーン電力を効率的に低コストで、しかも近隣で入手するにはどうすればよいのか?

 この課題について、楊氏の会社は、湘江流域の島の周辺の「風」と「光」に注目した。

 オレンジ島の西には、長沙市寧郷市(Ningxiang)の「能創麦田(Nengchuang Maitian)分散型風力発電所」があり、南には湘潭市(Xiangtan)黄土咀村(Huangtuju)の「大唐(Datang)黄土咀太陽光発電所」がある。これら2つの発電所からのグリーン電力は、グリーン電力専用線を通してオレンジ島に直接供給することができる。

「風力と太陽光という2つの新エネルギーは、相互補完性を実現しやすく、電力供給の安定性を高めることができる。またオレンジ島に柔軟な配電網を建設することで、島全体の電力供給の信頼性をさらに高めることができるし、将来的には、分散型太陽光発電、エネルギー貯蔵設備、充電スタンドなどを配置することもできる」、楊氏はこのように分析している。

 オレンジ島では昨年8月からは、点から点へのピンポイント供給に成功し、大規模な二酸化炭素削減が実現した。また同島は、独自のグリーン化も進めており、炭素削減と炭素吸収(炭素隔離)に取り組んでいる。

「まるで川風が花びらを吹き飛ばしているようだ」、この現代彫刻のような設備は、実は小型風力発電タービンなのだ。

「川からの微風で発電ができるなら、道路でも発電できるはず」、芝生の前の太陽光発電歩道は、昼間は太陽エネルギーを蓄え、夜には自動的にライトを付ける。太陽光発電と照明とエネルギー貯蔵の有機的な組み合わせだ。

 島の公園の東屋(あずまや)やバス停の屋根や壁の一部には、実は秘密が隠されている。特殊な表装の太陽光発電タイルや発電壁は、普通の瑠璃瓦(るりがわら)や床から天井までの大判のガラス窓と見た目が変わらず、外観を損なうことなく、屋外スクリーンや充電設備などに電力を供給している。

 フィットネスバイクのエリアでは、利用者はペダルをこぐだけで目の前の大型スクリーンに電力を供給することができる。

「ただのエアロバイクだと思っていたのに、発電もしていたなんて思ってもみませんでした。今は毎朝ここに来て運動しながら発電に協力しています」、エアロバイクで運動中の地元の男性は笑顔でこう語った。

 李科所長は「島に設置された太陽光発電タイル、発電カーテンウォール、太陽光発電歩道など各種の小型発電装置によって、年間2万1000キロワットアワーの発電量が見込まれています。また二酸化炭素排出削減量は、10ムー(約6667平方メートル)以上の森林が1年間に吸収する二酸化炭素量に相当します」と説明する。

 また李氏は「オレンジ島で二酸化炭素排出モデルを確立した後、島のエネルギー消費構造とエネルギー利用の変化、および樹木の種類の増減や調整は『オレンジ島ゼロカーボン・データセンター』で視覚的に把握できます。将来的には、島の実情に合わせて植生を最適化し、炭素吸収能力をさらに強化していく予定です」と付け加えた。

 現在、オレンジ島では、グリーン電力による炭素排出量の削減、新エネルギーへの転換、植生による炭素吸収などの措置によって、ゼロ・カーボンがほぼ実現している。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News