中国の科学者、チョモランマが「異常に高い」謎に迫る研究結果発表
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【10月9日 Xinhua News】中国科学院院士(アカデミー会員)で中国地質大学(北京)地球科学・資源学院の王成善(おう・せいぜん)教授のチームと共同研究者らはこのほど、河川の浸食がチョモランマの高度に与えた潜在的影響に関する研究成果を英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス」に発表した。この発見はチョモランマが「異常に高い」謎の解明に役立つだけでなく、他の山脈の形成メカニズムを探る上で新たな視点を提供する。
王教授によると、世界の科学者は、チョモランマが主にインドプレートとユーラシアプレートの衝突で形成され、この地質学的プロセスはチョモランマだけでなくヒマラヤ山脈全体を形成したと確認しているが、プレートの衝突だけでチョモランマの標高が他の山頂よりかなり高い理由を完全に説明することはできないという。例えば、チョモランマは標高世界第2位のチョゴリ(K2)と比べて約250メートル高いが、チョゴリと3番目、4番目に高い山との標高差はわずか数十メートルしかない。この異常な高度差は、チョモランマの隆起が何らかの独特なメカニズムの影響を受けた可能性を示唆していると王教授は指摘する。
長年にわたる科学的調査の結果、研究チームはチョモランマの周辺に独特な水系の進化があり、特に古代の河川であるコシ川の進化と密接な関係があることを発見した。コシ川の上流はチョモランマ北側の中国国内を流れる朋曲(バムチュ)川で東西方向に流れ、下流はヒマラヤ山脈を貫き南北に流れている。研究チームは河川力浸食モデルを構築し、非線形逆解析法を組み合わせることで、最終的にコシ川の「河川争奪」過程を再現した。
河川争奪は造山帯で一般的に見られる現象で、1本の河川の流れが浸食により別の河川の水流を「奪う」ことを意味する。研究結果により、約8万9千年前にコシ川で河川争奪が起こり、流域面積が急激に拡大して河川の浸食速度が加速し、年間最浸食深度が12ミリに達したことが明らかになった。河床が下へ削られると、周囲の岩石が軽くなるためアイソスタシー(地殻均衡)が発生し、この過程がチョモランマの隆起をさらに進めた。推定では、河川争奪以降、チョモランマの標高は年間0・2~0・5ミリ、累計で15~50メートル上昇したとされる。
王教授は、「地殻の構造運動がチョモランマの隆起の主な原因であることに変わりはないが、今回の研究は河川争奪が山の隆起を引き起こす新たなメカニズムを明らかにし、造山帯の進化や高峰の形成過程をより総括的に理解することに役立つ」と語った。(c)Xinhua News/AFPBB News