【文化中国】北京の中軸線が「世界文化遺産」に選出、デジタル技術の効果絶大
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【7月31日 CNS】ユネスコ(UNESCO)の第46回世界遺産委員会で、「北京の中軸線・中国の理想的な都市秩序の傑作」が世界遺産リストに登録され、北京で8番目の世界文化遺産となった。
「北京中軸線」の世界遺産申請過程で、デジタル技術がその全プロセスで使用されたのは、世界で初めてだという。この登録の成功は、デジタル技術の重要性を示す革新的な成果となった。
北京市文物局とデジタルゲームも手掛ける中国の有名IT企業「騰訊(テンセント、Tencent)」とは2021年9月、「中軸線世界遺産登録申請プロジェクト」で戦略的な協力関係を結び、デジタル技術を利用した中軸線の文化遺産の保護、継承、活用を積極的に推進してきた。
その一環としてゲーム技術を使って制作された「デジタル中軸線-小宇宙」が、登録決定の当日に、重要資料としてオンラインで披露された。
この作品は、南は永定門(Yongdingmen)から北は鐘楼(Zhonglou)まで、故宮(紫禁城、Forbidden City)の歴史的な宮殿の建物や皇帝の祖先を祭る「太廟(Imperial Ancestral Temple)」、土地と穀物を祭る「社稷壇(Altar of Land and Grain)」などの儀式や祭祀のための建築物、また前門大街(Qianmen Street)や皇帝が乗った車しか通れない永定門御道(Yongdingmen Yudao)などの歴史的な道路など、中軸線の重要な遺産区域の登録申請の文章の内容に沿って、中軸線の「デジタル小宇宙」が全て精緻に再現されている。
その三次元データ量は15テラバイト以上にも達しているという。
中軸線デジタル化の作業は20年からすでに始まっていた。「北京市測絵設計研究院(Beijing Institute of Surveying and Mapping)」の技術チームは中軸線上のあらゆる遺産的要素を超精密なマッピングと三次元モデル化で、デジタル空間に実物と瓜二つの中軸線を再現した。
このデジタル中軸線の精密度は想像を超えている。技術チームが収集したのは、中軸線上にある古い建造物や歴史的な市街に関する情報だけではない。例えば、天安門広場にある20万枚以上の花崗岩の敷石の情報も個別に一つずつ収集した。
研究院ビッグデータセンターの陶迎春(Tao Yingchun)主任は「広場の敷石は、しま模様や形状、摩耗の程度にそれぞれ違いがあり、一つとして同じものはありません。広場は観光客が数多く往来しているので、データ収集は非常に困難な作業でした」と話した。
最終的には、車両に搭載された対地上スキャニングシステムの助けを借りて、カメラは地面の敷石の鮮明な垂直データを採取することができたという。技術チームは革新的な技術を用いて、形状の異なる敷石の自動番号付けを行い、個々の敷石に独自のIDを持たせた。
また、中軸線の歴史的建築物の修復工事では、初めて「インテリジェント建設技術」が採用された。修復作業に携わった李万博(Li Wanbo)氏の話によれば、建物情報モデル、三次元スキャニング、パノラマ画像イメージなどの技術を利用すると、施工者は、事前のプランニングも含め、より科学的な修復計画が立案できるという。
李氏は「例えば、建築物の一部に気泡などの原因で基盤層と表層との間の密着不良や小空洞が存在しても、それを肉眼で見つけるのは困難です。そういう時に、CTスキャンに相当するスキャニング技術を用いることで、建築物の『健康状態』が一目瞭然に把握できます。それで損傷部分へのピンポイントの対処ができ、手入れを最小限に抑えた『低侵襲修復』の作業が可能になりました」と説明する。
工事関係者は、修復作業の全工程をデジタルで記録し、完全な「デジタル・アーカイブ」を保存している。これは、世界遺産の建築物の将来的な損傷の監視と修復のデータベースで、予防的な保護に役立つ。
ユネスコ世界遺産委員会の「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」およびその「運用指針」では、文化遺産の保護と継承には一般市民が参加する必要があり、これが新たな世界遺産申請の不可欠な要素だとされている。そしてこのデジタル技術は、一般市民が文化遺産の保護と継承への参加の新たな方法も提供している。
「北京中軸線文化遺産申請保護業務弁公室」は、「テンセント」などの組織と共同で、インターネット上に「デジタル夜警・ボランティアシステム」を立ち上げた。
市民や観光客は「クラウド中軸・ミニプログラム」で、QRコードをスキャンし、近くの保存建築物や文物の写真を検査報告としてアップロードすることができる。北京中軸線の歴史や文化の魅力を味わいながら、それらの保護に貢献することができる。
現在までに、「クラウド中軸」の登録者数は80万人近くの上り、アップロードされた検査写真は7万枚以上、ボランティアは1万7000人近くに達しているという。
文化遺産申請文作成の責任者で清華大学(Tsinghua University)国家遺産センターの呂舟(Lu Zhou)主任は「北京中軸線公式ウェブサイト、『クラウド中軸』『小宇宙』などは、世界で初めてのメガサイズの都市歴史景観のデジタル化、実物とデジタルとの相互作用体験を実現し、申請文章の理解に役立ち、また市民参加のための最良のプラットフォームとなりました」と説明する。
またテンセントのプロジェクト責任者・舒展(Shu Zhan)氏は「中軸線のデジタル化で、一般市民は中軸線の壮大さと歴史的変遷を没入型で体験することができ、同時に中軸線文化遺産の革新的活性化の促進、文化遺産保護の持続可能な発展が実現可能になりました」と、デジタル化の意味を語っている。(c)CNS/JCM/AFPBB News