【6月15日 AFP】ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は14日、ウクライナが和平交渉開始を望むなら、ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ東・南部4州から撤退するよう要求した。事実上の降伏勧告にウクライナや西側諸国は猛反発している。

 ウクライナ提唱の和平案を協議するスイスでの「世界平和サミット」の開催を翌日に控える中、プーチン氏は、ウクライナが4州から同国軍を完全に撤退させ、北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念しない限り、ロシアが侵攻を停止することはないと述べた。

 モスクワでロシア外交官らを前に、「ウクライナ軍はドネツク(Donetsk)、ルガンスク(Lugansk)両人民共和国、ヘルソン(Kherson)、ザポリージャ(Zaporizhzhia)両州から完全に撤退しなければならない」と演説した。

 ロシアは2022年、4州の併合を一方的に宣言したが、いまだどの州も完全に掌握できていない。ヘルソン、ザポリージャ両州に至っては、州都もウクライナ側が維持しているため、和平交渉開始の条件として、ウクライナがいまだ維持する広大な領土の割譲を求めたことになる。

 プーチン氏は、「ウクライナ政府が実際に軍の撤退を開始し、NATO加盟の断念を公式に発表すれば、われわれはまさにその瞬間に停戦し、交渉を開始する」と主張。

「ウクライナの中立化、非同盟化、非核化、非武装化、非ナチ化」を求めると述べた。

 この要求にウクライナ側は直ちに反発。

 ウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は先進7か国(G7)首脳会議(サミット)の傍ら、イタリアのテレビ局「Sky TG24」に対し、ナチス・ドイツ(Nazi)総統アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)に言及して、「これらの通告は最後通告だ。ヒトラーがしたことと同じだ」と主張。

「ナチズムは既に現れている、プーチンの顔を持っている」と続けた。

 ウクライナ外務省も、「ばかげた」要求だと批判し、ロシアが「ウクライナの占領、ウクライナ国民の絶滅」を望んでいる証拠だと述べた。

 ウクライナを支援する西側諸国も反発。

 米国のロイド・オースティン(Lloyd Austin)国防長官はベルギー・ブリュッセルでのNATO会合の最後に、「プーチン氏はウクライナが主権を有する領土を不法占拠している。平和をもたらすためにウクライナに何をしろと指示する立場にはない」と述べた。

 NATOのイエンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)事務総長も、プーチン氏の行動には「誠実さ」がないと批判した。(c)AFP