ルペン氏、国民の「マクロン嫌悪」に逆転の望み 仏大統領選
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【4月23日 AFP】仏国民は自国の大統領を嫌うことで有名だが、現職のエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)氏は就任後の5年間で、歴代大統領の中でもまれに見る反感を買った。24日に行われる大統領選の決選投票でマクロン氏に挑む極右候補のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)氏は、一部国民が持つマクロン氏への激しい嫌悪感に訴えることで、形勢逆転につなげようとしている。
ルペン氏は、20日夜のテレビ討論会でマクロン氏が不快なほどの攻撃姿勢を取ったことを受け、同氏の人格批判を強めた。21日夜に北部で開いた最後の選挙集会で、マクロン氏の討論会での振る舞いについて、「人々がすでに察していた本性を裏付けるものだった。冷淡で、人を見下し、限界のない傲慢(ごうまん)さを示した」と断じた。
マクロン氏は討論会で、ルペン氏を軽蔑するような表情を見せながら批判を繰り返し、同氏の公約を「筋が通らない」と一蹴。その攻撃的な姿勢は、評論家にこぞって取り上げられた。
仏シンクタンク「ジャン・ジョレス財団(Jean-Jaures Foundation)」のジャンイブ・カミュ(Jean-Yves Camus)氏はAFPに対し、マクロン氏が「時に必要以上に攻撃的だった」と指摘した。
こうした批判は目新しいものではない。元投資銀行家で、政界を瞬く間に駆け上って仏史上最年少の大統領となったマクロン氏には、傲慢さのイメージが常に付きまとってきた。
マクロン氏をめぐる世論の分断はこれまで、数え切れないほどのニュース記事や書籍、テレビ番組で論じられてきた。中でも注目を集めたのが、2018~19年に起きたマクロン氏に対する暴力的な抗議運動「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト、gilets jaunes)」だ。
■反マクロン運動はフランス革命も想起
仏国民の反マクロン感情に関する書籍を共著したベテランジャーナリストのニコラ・ドムナック(Nicolas Domenach)氏はAFPに対し、「マクロン氏が集める嫌悪は、これまでなかった類いのものだ」と説明。在任中に一部国民からこれほどまでの反感を買った仏大統領は、シャルル・ドゴール(Charles de Gaulle)氏くらいだろうと語った。同氏が嫌われた主な原因は、1962年のアルジェリア独立承認で、裏切り行為だと批判された。
マクロン氏に対する抗議デモではしばしば、究極の階級闘争である1789年のフランス革命(French Revolution)を想起させる光景がみられる。黄色いベスト運動の参加者は、革命で断頭台にかけられた国王ルイ16世(Louis XVI)のように、マクロン氏をかたどった人形を公の場で斬首したり、同氏の顔写真をやりの先につけて掲げたりした。
だが今のところ、世論調査の平均ではマクロン氏の支持率が55%で、45%のルペン氏を僅差でリードしている。
ルペン氏はマクロン氏よりも恵まれた生い立ちで、地方出身のマクロン氏と違い首都パリの出身だが、社会的弱者の代弁者を自負している。ただ、排外主義的な極右勢力に身を置いていたことから、世論調査では国民の半数から「不安」を抱かれていることが示されている。
一方のマクロン氏は、一部から忌み嫌われているものの、職務遂行能力や大統領としての威厳といった重要な資質への評価は、ルペン氏よりもはるかに高い。(c)AFP/Adam PLOWRIGHT