中国の「プラスチック制限令」その後 コスト削減で代替品定着目指す
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【4月21日 東方新報】中国では2021年から全国の飲食店でプラスチック製ストローの利用を禁じ、主要都市のスーパーなどでプラスチック製の買い物袋の使用を禁止した。各店舗では環境に優しい代替品への切り替えが進んでいるが、一部ではまだ浸透していない。
中国は世界最大のプラスチック生産国だが、プラごみによる土壌・環境汚染が深刻化。政府は2020年、プラごみの輸入を全面禁止し、さらに国内でのプラ製品を大規模規制する「プラスチック制限令」に踏み切った。その第一弾がストローだ。2019年に中国で生産されたプラスチック製品は8184万トンで、このうちプラ製ストローは3万トン近く、460億本生産されている。
2021年当初、プラ製ストローに代わって登場したのが紙ストローだ。浙江省(Zhejiang)で紙ストローの製造工場を経営する周小玲(Zhou Xiaoling)総経理は「注文が殺到したので、勤務シフトを2班に分けて24台の機械をフル稼働し、1日300万~500万本を製造した」と話す。
ところが「紙ストローはミルクティーを飲み終わらないうちに、柔らかくなって飲みづらい」「飲み物のフタを貫通しないで折れてしまう」「タピオカを吸い込めない」と多くの苦情が出た。中国ではティードリンクが空前のブームになっており、若者が店舗で買ったドリンクをおしゃべりしながら飲むスタイルが広まっている。
そのため、最近はプラ製ストローと使用感が似ているポリ乳酸ストローが主流となっている。トウモロコシやジャガイモ、サトウキビに含まれるでんぷんから得られるポリ乳酸を原材料にしており、生ごみと同様に処理でき、焼却しても有害物質を発生しない。紙ストロー工場の周さんは「最近は注文が減って5~10台の機械だけ稼働し、1日の製造は80~150万本程度。しかも70%は輸出用です」と話す。
ただ、ポリ乳酸ストローはコストが高い。長さ23~24センチのストローだと、プラスチック製は1本0.05元(約1円)、紙製は0.1元(約2円)、ポリ乳酸製は0.2元(約4円)となる。薄利多売の業界では決して少ない出費ではなく、店舗によっては「さりげなく」プラ製ストローを店頭に置いているところもある。
プラ製買い物袋についても、主要都市のスーパーなどでは生分解性ポリエステルのPBAT素材に切り替わった。ただ、一部の店舗では今も無料のプラ製買い物袋を提供している。ある店舗は中国メディアの取材に「有料の生分解性買い物袋は、抜き打ち検査で5000元(約10万456円)の罰金を取られないよう、形だけ置いている」と打ち明けている。
「プラスチック制限令」では、2023年から主要地域でネット通販の郵送にプラスチック製品を利用することを禁止し、2025年までに都市部のデリバリーで使われるプラ容器を3割減少させるなどの方針を打ち出している。専門家は「自然再生エネルギーの太陽光発電や風力発電が定着したのは、結局はコストを削減できたから。それまでに多くの事業者が参入し、淘汰(とうた)を繰り返した。プラ製品の代替品が定着するには、同じようにコストを削減できるかどうかにかかっている。企業は生き残りのための長いマラソンを強いられるだろう」と解説している。(c)東方新報/AFPBB News