【3月27日 AFP】ロケット弾にミサイル、砲弾──。ウクライナ北東部の第2の都市ハリコフ(Kharkiv)では、ロシア軍による包囲下、砲爆撃がやむことはない。もはや無差別攻撃が日常と化している。

「もちろん怖いです。途切れることなく落ちてくるんですから」。家路を急ぐニコライさんは言った。「ビールを2、3本買いに出た」帰りだという。この地区では2時間前、支援物資を受け取ろうと郵便局の前に並んでいた6人をロケット弾が直撃した。

 市民が外出するのは物資の調達や犬の散歩の時だけだ。ラブラドルレトリバーの老犬を連れたアンナ・コリニチェンコ(Anna Kolinichenko)さん(50)は、疲れた様子で「私はハリコフ生まれ。どこにも行くところがありません」と語った。

 空襲警報が鳴っても、わざわざ地下室に下りることもなくなった。「爆弾が落ちてきたら、どうせ死ぬんだから」

■「毎日が花火」

 ロシアとの国境から約40キロ、三つの川の合流地点に位置するハリコフの人口は150万人超。多くがロシア語話者だ。

 地元当局によると、先週は1日に砲弾44発とロケット弾140発が降り注いだ。黒海(Black Sea)からミサイル2発も飛んできた。

 イーホル・テレホフ(Igor Terekhov)市長は、毎日「無差別爆撃があり、複数の死者が出ている」と話した。

 検問所に立つ警官は「ハリコフでは今、毎日が花火大会です」と、無表情に語った。

 侵攻初日の先月24日、ロシア軍は市内に空挺(くうてい)部隊を降下させ、外縁部にも侵入したが、やがて北部と東部の市外へと押し戻された。その後は、昼夜を問わず、市北部と東部を中心に砲撃を加えている。

 市中心部の庁舎や治安当局の施設は、長距離ミサイルの標的となっている。防空設備は侵攻初期に破壊され、市は空爆に対して無防備な状態となっている。

 市街戦が繰り広げられた自由広場(Freedom Square)では、3週間以上が経過した今も、がれきと化した庁舎跡で救助隊員が犠牲者の捜索を続けている。これまでに20人以上の遺体が収容された。

 市当局によると、ロシア軍に破壊された建物は1143棟に上り、うち998棟が一戸建て住宅や集合住宅だ。立像や記念碑の周囲には、空爆から守るため土のうが積み上げられている。

■「破壊工作員がいた」

 今は市街戦は起きていないが、コリニチェンコさんは「ここに破壊工作員がたくさんいた」と話す。

 ハリコフは、テレホフ市長も認めるように「ロシアに兄弟や友人を持つ住民が住む街」だ。ロシア側はそうした親密なつながりに付け込んで武器や戦闘員を市内に投入した。

 市内には即席のバリケードや対戦車障害物が点在する。ロシアへの不信感は根強い。閑散とした通りをパトカーが巡回し、不審車両は直ちに停止させられ、検査される。夜間は、狙撃手が不審者を見つけたら発砲するよう命じられている。

 地下深くの秘密の場所で取材に応じたテレホフ市長は「今の状況は非常に厳しい」と認めた。「それでもわれわれは団結し、戦っている」 (c)AFP/Herve Bar