【12月24日 東方新報】中国南部のナンバーワン大学といわれる広州市(Guangzhou)の中山大学(Sun Yat-sen University)の名前をそのまま商品名にした化粧品がインターネットで販売されている。中国メディアは、企業が大学名を無断で使用した疑いを指摘している。

 中山大学は中国の近代革命に貢献した孫文(Sun Yat-sen、孫中山)ゆかりの大学で、孫文の号である「中山」を冠している(中国では孫文を「孫中山」と呼ぶことが多い)。歴史の古い総合大学で、社会科学や医学、理学など幅広い分野でレベルが高く、「華南第一学府」と呼ばれている。

 ネットで販売され話題になっているのは、容器に「中山大学」とデカデカと表記されているボディローション。ロゴの下には、「広州中大生化科技有限会社と広州楚業科技有限会社の共同製品」と記されている。日本で「京大」と言えば京都大学(Kyoto University)を思い浮かべるように、中国で「中大」と言えば中山大学を意味する。「中大」の名前が入った企業が販売していると表記することで、中山大学との関わりが深いとダメ押ししているようだ。ネットではさらに「中山大学医薬センターが中山大学と共同研究開発」と宣伝し、あるオンラインショッピングサイトでは人気ランキング1位になっている。

 だが、中国メディアの記者が2社の連絡先に電話をかけても連絡が取れず、カスタマーセンターに「中山大学との関係を証明できるものはあるか」と問い合わせると、「製品は本物であることを保証します」としか答えなかったという。この2社は「中山大学」のロゴで他にもアイクリーム、洗顔クリーム、パウダーなど化粧品シリーズを販売している。

 株式情報によると、広州中大生化科技有限会社の親会社にあたる企業の株100%をかつて中山大学が保有していたが、2020年12月にすべての株を売却している。このわずかなつながりから「中山大学」の名前を使用している可能性がある。中山大学の関係者は取材に「商品と大学は全く関係ない」と答えている。

 中国ではこれまでも、「南方医科大学(Southern Medical University)」とラベルを貼った洗顔クリームや、「曁南大学(Jinan University)」という名前のパウダーなど、医学分野で評価の高い大学の名前を使った化粧品が販売され、大学側が協力関係を否定するケースが繰り返されている。過去には「中山大学と共同開発」とうたった化粧品が市場監督部門の調査で虚偽と判明し、製造企業は10万元(約179万円)の罰金と商品回収の処分を受けている。こうした事態を受けて教育部などは今年5月、「当該の大学の許可なく商品や広告に校名を使ってはいけない」と通達を発表しているが、あやかりビジネスはその後も横行している。

 中国人民大学(Renmin University China)法学院の劉俊海(Liu Junhai)教授は「信用力や影響力の弱い一部の企業は、有名大学の名前を使って消費者をひきつけようとしている。これは消費者権益保護法違反であり、大学の名誉も毀損(きそん)している」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News