鉄鍋づくりの日本人匠は偽物だった、実際は中国製
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【3月23日 東方新報】中国のインターネットショップで人気商品だった「日本制鉄鍋」が中国製の偽物であることが最近、明らかになり、話題を集めている。上海市の工商当局などによって摘発されたのは、福建省(Fujian)泉州市(Quanzhou)にある業者で、インターネットショップ「天猫(Tmall)」などで日本の「匠(たくみ)」が作ったと称する鉄鍋を大量販売し、荒稼ぎをしていた。
「中国経済ネット」など複数の中国メディアによれば、同業者はインターネットショップで、日本の富山県にある「日本株式会社伊藤製作所」というメーカーの代理店と自称し鉄鍋を販売し、宣伝動画もアップした。動画では、雇われた中国人俳優が「伊藤家4代目家主」として作業着姿で登場し、あまり流ちょうではない日本語で鉄鍋づくりの苦労話などを紹介した。「人生をかけて一つのことしかやらない」という伊藤家のモットーを継承し、「鍋づくり」に自らの人生をかけたと主張した。もちろん伊藤家は架空されたもので、動画で紹介された伊藤家の初代家主の写真は、インターネットに出回っている文豪、志賀直哉(Naoya Shiga)のものが使われていた。
事実上、中国国内で生産された鉄鍋を、同業者は800元(約1万3370円)から1400元(約2万3400円)と相場より高い値段を販売していた。中国人消費者の日本の「匠」に対する信頼から注文が殺到し、計3000万元(約5億円)を売り上げたという。
通報を受けて上海市の工商管理当局は同業者を摘発したが、「虚偽広告」などを理由に処罰する予定だという。中国では、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどの伝統メディアの広告に対しさまざまな規制があり、虚偽広告を掲載、または放送した場合は、そのメディアに対する罰則もあるため、メディア側は事前に広告の内容の真偽をチェックするのが一般的だった。しかし、最近、台頭したインターネットに関する規制はまだ少なく、誰からチェックされない宣伝動画が出回ることが多く、今回の事件は氷山の一角にすぎないと指摘する中国人記者もいる。
刑法に詳しい中国政法大学(China University of Political Science and Law)の羅翔(Luo Xiang)教授は、中国メディアの取材に対し「日本の4代目の匠という架空話を利用し、多くの消費者をだまし、多額な利益を手にした事実があるから、今回の事件は虚偽広告よりも、詐欺罪に該当する」とコメントした。事件を受け、中国のインターネットには、虚偽広告に関する法整備を早急に取り組むべきだという意見が多く寄せられた。(c)東方新報/AFPBB News