【5月17日 People’s Daily】マイクに向かって物語を話し、一人で何役もこなす。中国では今、インターネットを通じた「朗読」がブームとなっており、多種多様な話し手が活躍している。音声コンテンツ配信アプリ「喜馬拉雅(Ximalaya)」が行っている朗読オーディションには毎年2万人以上が参加。「蜻蜓(Qingting)FM」は35万人の朗読家と契約している。通信アプリ「微信(WeChat)」もプロの朗読家と専門団体が朗読サービスを担っている。

「朗読は声だけで作品を表現し、リスナーにその場にいるように感じてもらう。挑戦的かつ趣のある仕事ですよ」と話すのは、声優の張安琪(Zhang Anqi)さん。これまで多くのアニメ作品で吹き込みをしてきた。

 作品中の複数の登場人物をどうやって区別するか。張さんはかつて児童書の音読収録で、主役のほか先生や同級生、家族など十数人の声を使い分けた。「まずは、それぞれの役柄の特徴を整理する。そして言葉遣い、口ぶり、語感、声質、会話のリズムで役柄を切り替えるんです」

 朗読ブームの広がりから、プロ以外のさまざまな市民も参入している。

 河北省(Hebei)承徳市(Chengde)の高校教師・李暁宇(Li Xiaoyu)さんは2009年から朗読に挑戦した。「最初は自宅の書斎で、15元(約230円)で買ったマイクをノートパソコンに取り付けて録音しました。音質はかなり悪かったですよ」。今では「喜馬拉雅」で李さんのフォロワーは40万人に上り、彼が朗読した歴史小説は1.9億回も聞かれている。「設備より朗読そのものが大事です。武侠小説を読む時は豪快さや勢いが大切だし、都会の恋愛小説だったら、ゆっくりとささやくように話すこと」と秘訣(ひけつ)を語る。

 西南大学の王さんは毎日、時間をつくっては朗読制作している。「朗読を通じて手に入るものは、単にその専門的能力だけじゃない。リスナーから『心が温かくなった』『これでぐっすり寝られる』というメッセージを受け取ると、こちらの心が休まります。一人でも多くの人に、生活に希望を与えたいですね」

 昨年末、プロの声優グループ「729声工場」は、人気長編SF小説「三体」を「喜馬拉雅」で朗読ドラマにした。シナリオの変更から配役、スタジオでの録音までに、ほぼ1年を要した。「SF作品を音声だけでドラマにするには、相当の表現力が必要。原作を尊重し、登場人物のイメージに合った声優も選ばないといけない」。声優の劉琮(Liu Cong)さんはそう説明する。「三体」の朗読ドラマは既に2000万回近く聞かれており、多くのリスナーが「どの役柄もイメージ通り」「夢中で聞き入った」と評価している。

「喜馬拉雅」はこれまでに500以上の出版社と200近いインターネット上の文学団体とパートナーシップ関係を築いている。「喜馬拉雅」創始者兼共同CEOの余建軍(Yu Jianjun)さんは「著作権や朗読のための原作改編権について、多くの出版社、著者と契約を進めている。絶えず変化する朗読市場の規模やニーズに対応するため、契約関係もしっかりしていきたい」と話している。(c)People's Daily/AFPBB News