世界のサプライチェーン、新型ウイルス流行に危機感
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【1月30日 AFP】中国を中心とする新型コロナウイルスの感染拡大により、自動車や電子機器メーカーから観光関連企業に至るまで、世界中の企業が供給網や収益への影響について不安を募らせている。
ウイルス流行の中心地となっている中国湖北(Hubei)省武漢(Wuhan)は、欧米や日本の自動車メーカーや電子部品メーカーの製造拠点だ。だが各国は現在、自国民を退避させるため航空機を手配している。
一方、中国当局は、武漢以外の複数の都市でも封鎖などの措置を取っており、数百万人に影響が出ている。1週間の春節(旧正月、Lunar New Year)休暇が延長される中、企業への負の影響は避けられない。
■自動車メーカー
自動車大手の米ゼネラル・モーターズ(GM)や仏PSAグループ、仏ルノー(Renault)、日産自動車(Nissan Motor)、ホンダ(Honda)などは武漢周辺を合弁企業の拠点としており、各社は状況を注意深く見守るとしている。
トヨタ自動車(Toyota Motor)は、自社の従業員だけではなく、中国国内の部品メーカーなどの間でも混乱が生じる可能性を考慮し、少なくとも2月9日までは中国での製造を停止すると発表している。
■電子機器メーカー
台湾の富士康科技集団(フォックスコン、Foxconn)は29日、中国本土の工場を2月中旬まで閉鎖すると発表した。
同社は、米アップル(Apple)のiPhone(アイフォーン)や薄型テレビ、ノートパソコンなどさまざまな機器を製造しており、この決定は世界中の取引先企業のサプライチェーンに影響を及ぼす可能性がある。
アップル自体は28日、2020年1~3月期の売上高について、新型ウイルス流行が及ぼす影響は不透明だとして、異例に広い幅を取った予想を発表した。
■観光
中国では現在、国外への団体旅行が禁止されている。そのため、高級ブランドや高級小売店が数多くある仏パリや伊ミラノ(Milan)などの都市は、神経をとがらせている。航空各社も中国行きの便を大幅に減らしている。
オランダ金融大手INGグループの中国経済専門家アイリス・パン(Iris Pang)氏は、新型ウイルスの流行が中国からアジア各国、欧州、北米へと広がっていることにより、今年の世界全体の旅行者数は昨年比30%減となる見通しを示した。
■小売りチェーン
米コーヒーチェーン大手スターバックス(Starbucks)は、新型ウイルスの流行により状況が目まぐるしく変わっていると述べるにとどめ、売上高についての詳細な見通しは示していない。
中国本土はスターバックスにとって世界で2番目に大きい市場で4000店舗以上を展開しているが、新型ウイルス流行により、現在はその半数が休業している。
米ファストフードチェーンのマクドナルド(McDonald's)と米宅配ピザ大手ドミノ・ピザ(Domino's Pizza)も、世界全体の売上高に占める割合から見ると同じく中国で大きな存在感を示している。
一方、スウェーデンの家具大手イケア(IKEA)は29日、中国本土に展開する店舗のほぼ半数に当たる30店舗を一時休業すると発表した。イケアは先週の段階で武漢の店舗を休業していた。
長引く混乱は今後、他の産業分野にも影響を及ぼす可能性がある。例えば中国は、欧米の製薬会社が多くの救命治療用にリパッケージしている医薬品の有効成分の生産で、世界首位を誇っている。(c)AFP/Jitendra JOSHI