【9月6日 AFP】地球温暖化により海洋がかつてないほど不健全な状態に陥っており、動物や人の間での疾病感染リスクや、世界各地での食糧安全保障リスクが懸念されているとした広範な科学報告書が5日、発表された。

 査読を経た研究に基づく今回の成果は、世界12か国の科学者80人によってまとめられた。米ハワイ(Hawaii)州で開かれた国際自然保護連合(IUCN)主催の世界自然保護会議(World Conservation Congress)で専門家らが発表した。

 世界各国の指導者と環境問題専門家9000人を集めて開催された今回の会議で、インガー・アンダーセン(Inger Andersen)IUCN事務局長は、「海がこの地球を支えていることは、誰でも知っている。海が人類の絶え間ない呼吸を可能にしていることは、誰もが知っている。それにもかかわらず、われわれは、海を不健全な状態にしている」と述べた。

 報告書の主執筆者の一人であるダニエル・ラフォリー(Daniel Laffoley)氏は、今回発表された報告書「Explaining Ocean Warming(海洋温暖化を説明する)」について、「海洋の温暖化が及ぼす結果に関する、これまでに実行された中で最も包括的で系統的な研究結果」だと説明する。

 ラフォリー氏によると、世界の海水は、気候変動によって1970年代以降に増した熱の93%以上を吸収し、地上で感じられる熱を抑制しているが、これにより、海に生息する生物のリズムが急激に変化しているという。

 IUCNの世界保護地域委員会(World Commission on Protected Areas)の副委員長を務めるラフォリー氏は「海は、人を守る盾となってきたが、このことの影響は決定的に重大だ」と指摘している。