■論文には異論も

 スピノサウルスの頭蓋骨、脊椎骨、骨盤、四肢の骨の化石は、サハラ砂漠(Sahara Desert)にある古代の川岸沿いに位置する、モロッコ東部のケムケム地層(Kem Kem beds)で発見された。

 スピノサウルスの化石は1912年にエジプトでドイツ人古生物学者エルンスト・フライヘア・シュトローマー・フォン・ライヘンバッハ(Ernst Freiherr Stromer von Reichenbach)によって最初に発見されたが、この標本は保管場所だった独ミュンヘン(Munich)の博物館が第2次世界大戦下の1944年に英空軍による空爆を受けたことにより、破壊されていたため、今回の新たな化石は古生物学者らにとって貴重な発見となった。

 一方で、今回の論文に異論を唱える研究者もいる。米ユタ(Utah)州プライス(Price)にある先史博物館(Prehistoric Museum)のケン・カーペンター(Ken Carpenter)氏はAFPに宛てた電子メールで、「スピノサウルスが生息していた場所の川は小さく、浅かった(深くても腰の高さほど)」と指摘。「鼻孔が高い位置にある恐竜は他にもいる。この特徴はかつてディプロドクス(Diplodocus)が水生だったとの仮説の根拠として使われたが、ディプロドクスが見つかった地層からは、広範で深い水域があったことを示す証拠が見つからなかったことから、この仮説は打ち消された」と述べている。

 研究チームは、スピノサウルスがどのように泳いでいたか、あるいは水中での動きがどのようなものであったかについてはまだ不明と述べている。「スピノサウルスは半分がカモで、半分がワニだ。今生きている動物の中には、これに似た動物で、モデルとして使えるようなものすら存在しない」とセレノ氏。「そうであるからこそ、スピノサウルスが何をしていたかを今後解き明かしていくことに特に興味をそそられるわけだ」

(c)AFP/Kerry SHERIDAN