【10月30日 AFP】米連邦最高裁判所は29日、1989年に起きた石油タンカー「エクソン・バルディーズ(Exxon Valdez)」号の大規模な原油流出事故で25億ドル(約2900億円)の補償金額は海事法の観点から不当だとする米石油大手エクソンモービル(ExxonMobil)からの訴えを受理すると発表した。

 事故は1989年3月24日、米アラスカ(Alaska)州プリンス・ウィリアム湾(Prince William Sound)沖でエクソンモービルの原油を積載した「エクソン・バルディーズ」号が座礁し、原油1100万ガロンが流出したもので、米国史上最悪の原油流出事故となった。

 同事故で、エクソンモービルは原油で汚染された沿岸地域の清掃費用として21億ドル(約2400億円)、同地域の漁民や住民らに対する補償金として3億ドル(約340億円)以上を支払った。

 このほかにも、同社は米政府およびアラスカ州政府による刑事訴訟を回避するため9億ドル(約1030億円)の罰金を支払っている。

 しかし、地域住民や漁民らは賠償金額を不服として民事訴訟を提起。その後、補償金額をめぐっては陪審裁判、高等裁判所で異なる判断が示されたことから、エクソンモービルは最高裁判所に現行の海事法に基づいた適正な補償金額の判断を求める訴えを起こした。

 これに対し、米最高裁は賠償金額については判断できないとしながらも、賠償金について海事法の観点からの再検証を求めるエクソンモービルの権利を認めた。

 一方、1994年に陪審員が下した補償金額50億ドル(約5700億円)を妥当とするよう求めた地域住民らの訴えは却下した。

 エクソンモービルの2006年の業績は売上高2650億ドル(約30兆3500億円)で、史上最高益となる395億ドル(約4兆5000億円)の収益を上げている。(c)AFP