【10月9日 AFP】2007年のノーベル医学生理学賞は、特定の遺伝子の機能を失わせた「ノックアウトマウス(knockout mice)」の作成に成功したマリオ・カペッキ(Mario Capecchi、米国)、オリバー・スミシーズ(Oliver Smithies、米国)、マーチン・エバンス(Martin Evans、英国)の3氏に贈られることが決定した。

 マウスの胚(はい)性幹細胞の遺伝子を操作して、ヒトの病気を複製した実験用マウスを作成する方法を発見した功績が認められた。ノックアウトマウスは実験用モデルとして、アルツハイマーやガンの原因解明や新薬の実験などに利用される。

 この発見は専門的には「ジーンターゲッティング(gene targeting、遺伝子を標的とすることの意」と命名されているが、通常は「遺伝子ノックアウト」と呼ばれる。

 エバンス氏(66)は授賞に、「子どものころからの夢がかなった」と喜びを語った。

 ナイトの称号を持つエバンス氏は、英カーディフ大学(Cardiff University)生物科学研究所の所長で教授(哺乳類遺伝学)も務めており、「英国の研究がこういう形で評価されたことをうれしく思う。科学分野で最高の栄誉を受け大変幸せだ」と語った。

 イタリア生まれのカペッキ氏は米ユタ大学(University of Utah)の教授(人類遺伝学・生物学)で、6日に70歳の誕生日を迎えたばかり。授賞は「この上ない栄誉だ」と語り、今後の抱負を述べた。

「現在の生物学研究はすべてマウスを使っている。今後は、この技術をマウス以外の生物にも応用できるかどうか研究したい。ヒトの免役システムはどうやって病気と闘っているのか。生物間で免疫システムの働きに違いはあるのか、違いがあるとしたら、それはどのようなものか。そういったことを解明していきたい」

 カペッキ氏は第二次世界大戦中、故郷イタリアのベローナ(Verona)で母親がナチスの秘密警察に逮捕され、ダッハウ(Dachau)の強制収容所に送られたため、路上で物乞い生活を強いられた。

 英国生まれのスミシーズ氏(82)は、幼いころ漫画で読んだ発明家にあこがれて研究者になったという。現在は米ノースカロライナ大学(University of North Carolina)の教授(病理学)。

 目下、腎臓の機能を研究しており、受賞の理由となった研究を利用して、遺伝子を矯正しヒトの治療に役立たせたいと語った。

 ノーベル医学生理学賞は8日、今年のノーベル賞の先陣を切って受賞者が発表された。(c)AFP/Pia Ohlin