【アリゾナ/米国 20日 AFP】ラスベガス(Las Vegas)の東方約190キロ、グランドキャニオン(Grand Canyon)にあるワラパイ(Hualapai)族居住地域内で20日、ガラス製の展望橋、「スカイウォーク」の完成記念式典が行われ、メディア関係者らに初めてその姿が披露された。


■ 2年の歳月をかけて完成

 招待客には、アポロ11号の宇宙飛行士、エドウィン・オルドウィン(Edwin Aldrin)さんや地元の先住民ワラパイ族の長老などが含まれる。

 「スカイウォーク」は、渓谷の端から約21メートルせり出したU字型の展望橋で、観光客らは約1200メートル真下の谷底を見下ろすことができる。

 建設設計者によると、展望橋は数百人分の重量に耐えられ、グランドキャニオンの強風の影響も受けない。重量は500トンで、床板は厚さ約10センチの強化ガラス製。岩盤の深さ約14メートルにまで埋め込まれた巨大な鋼鉄製ボルトが橋を支える。さらに、巨大な衝撃吸収材が観光客の歩行による橋の揺れを防ぐという。


■ 先住民の「収入源」となるか

 2年の歳月を費やして完成した「スカイウォーク」は、観光産業による先住民の収入源のモデルケースとなることが期待される。

 アクセスが不便なグランドキャニオンの奥地に居住するワラパイ族は、従来の「西部開拓時代の体験ツアー」型の観光産業では苦戦を強いられてきたことから、「スカイウォーク」で多数の観光客を誘致したいと期待している。

 「スカイウォーク」は上海出身のビジネスマン、デービッド・ジン(David Jin)氏の発想から生まれた。

 ラスベガスで投資業を営むジン氏は、「スカイウォーク」建設プロジェクト資金、3000万ドル(約35億1700万円)を出資したと言われている。また、出資金償還について25年間はチケット代収益の5割をワラパイ族に還元するとの契約を交わしている。「スカイウォーク」のチケット代は25ドル(約3000円)前後になるとみられている。


■ 一方では批判の声も

 一方で、ワラパイ族や環境活動家からはプロジェクトへの批判の声もあがっている。

 ワラパイ族のドロレス・ホンガ(Dolores Honga)さん(70)は、「スカイウォーク」はワラパイ族の「聖地」を侵していると語る。

 「何世代ものワラパイ族の祖先が、この地に眠っている。ここは霊的な土地なのだ」

 環境活動家、キーラン・サックリング(Kieran Suckling)さんも、グランドキャニオン内のガラス製建造物の建築に懐疑的だ。

 サックリングさんはCNNの取材に対し、「エッフェル塔は驚異的な建造物だ。しかし、グランドキャニオン渓谷の奥地にもエッフェル塔が欲しいかと聞かれれば、答えは『ノー』だ」と語る。

 一方、「スカイウォーク」建設プロジェクトに密接に協力してきたワラパイ族会議メンバーのシェリ・イエローホーク(Sheri Yellowhawk)さんは肯定的だ。

「長年にわたって、ワラパイ族は貧困や失業に苦しんできた。(スカイウォークによって)その状況を脱したいとの望むことが、非難に値するとは思わない」。

 「スカイウォーク」は28日に一般公開される。

 写真は20日、「スカイウォーク」を見学する招待客。(c)AFP/Robyn BECK