【東京 13日 AFP】旧日本軍が遺棄した化学兵器による中国人被害者5人が日本政府に賠償を求めている訴訟で、東京高等裁判所は13日、東京地裁の一審判決を支持し、原告の賠償請求を棄却した。

 原告側が求めていた賠償額は計8000万円。原告弁護団の声明によると、原告のひとりLi Guoqiangさん(57)は1987年、建設現場で発見された化学物質を吸い込んで以降、呼吸障害を抱えている。

 旧日本軍の被害者による戦後補償について日本の裁判所は通常、「国家間の問題であり、国家と個人の問題ではない」「出訴期限の時効を過ぎている」などとし、棄却してきた。

 第二次大戦にまつわる歴史問題は、旧日本軍が侵略した国と日本政府の間で緊張を生み続けている。安倍晋三首相は最近、旧日本軍の従軍慰安婦問題について、被害者の連行に強制性はなかったと発言し、国際的な物議をかもした。

 戦後補償に関する訴訟における例外的な判例としては、2003年東京地裁が、旧日本軍遺棄化学兵器によって親戚らが亡くなった遺族ら中国人原告13人に対し計1億9000万円の支払いを国に命じた例がある。日本政府は東京高裁に控訴し、判決はまだ出ていない。

 日本と中国の両政府は2012年までに、旧日本軍の遺棄化学兵器を合同で処理する方針で合意している。終戦時に旧日本軍が中国大陸に遺棄した化学兵器は、日本側の推計では約40万個とみられているが、中国側は200万個以上と主張し食い違っているが、戦後の遺棄化学兵器数としては世界最多。中国側は遺棄化学兵器による死傷者はこれまでに総計数千人に達するとしている。

 写真は13日、東京高裁前で行進する原告団の支援グループ。(c)AFP/Kazuhiro NOGI