【ロサンゼルス/米国 25日 AFP】第79回アカデミー賞授賞式が25日午後5時(日本時間26日)、ハリウッドのコダック・シアター(Kodak Theatre)で開催された。

■力強い演技が高く評価される

 主演女優賞を獲得したヘレン・ミレン(Helen Mirren)は、ダイアナ妃の死に揺れ動く英国皇室を描いた作品「クイーン」でエリザベス2世を演じた。デビュー当初はセックスシンボルのイメージが強かったミレンだが、同作品では力強い女王にふんし、見事な演技を見せた。

 「ボルベール〈帰郷〉」のペネロペ・クルス(Penelope Cruz)、「プラダを着た悪魔」のメリル・ストリープ(Meryl Streep)、「あるスキャンダルの覚え書き」のジュディ・デンチ(Judi Dench)、「リトル・チルドレン(原題)」のケイト・ウィンスレット(Kate Winslet)を凌いでの受賞だった。

 一度は「最高にくだらない」女優と批評を浴びたミレンも、現在は61歳。アカデミー賞候補者に「英国万歳! (The Madness of King George 1994) 」と「ゴスフォード・パーク (Gosford Park 2001) 」の2作品で選ばれるものの、受賞は逃していた。

■エリザベス2世に深い感謝

 アカデミー賞に加え、ミレンは今年、ゴールデン・グローブ賞(Golde Globe Award)や全米映画俳優組合賞(Screen Actors Guild Award)、BAFTA賞など数々の賞を総なめにしてきた。

 「私の姉が言っていたんです。みんな金賞を取りたがるでしょ、って。だからこの賞は私の人生で最も輝く金賞なの」とヘレンは述べた。

 また、ヘレンは50年間にわたり英国王皇室を見守ってきたエリザベス2世の勇気と堅実さに敬意を払うとともに、受賞は彼女のおかげだと深い感謝を示した。

 ヘレンは「彼女には心から感謝しています。この役を演じなかったら多分この受賞はなかったのですから」と語った。

 2003年に英国皇室から「Dame(デーム)」の称号を受けたミレンは最近、ウェブサイト「IGN.com」上で「紅茶を通して、エリザベス2世の気持ちを知ろうとした」と書いている。

 「公の仕草では見ることのない、リラックス感や胸の躍るような気持ちをお持ちなのです。だからエリザベス・ウィンザーというもう一人の彼女、つまり重々しい雰囲気を持たず、愛らしい笑顔で人々を迎える一人の女性という要素を演技に含ませたかったのです」と同サイト上にミレンはつづっている。

 1997年にダイアナ妃が交通事故で亡くなった際、ミレンは英国を離れていてほっとしたという。お祭り騒ぎのようなその雰囲気が不気味に感じたのだ。

 「彼女のことだというのに、まるで自分たちのことのようになってしまっていたのが不気味でした」とミレンは語っている。

■『脱ぐ』女優として有名?

 イレーナ・ヴァシーリエヴナ・ミローノヴァ(Llyena Vasilievna Mironov)という本名を持つヘレンは、1945年7月に南イングランドで生まれた。18歳で舞台「アンソニーとクレオパトラ」でクレオパトラを演じデビュー。英国のテレビシリーズ「プライム・サスペクト(Prime Suspect)」で人気を得たほか、多くの映画作品に出演、ミニムービー「エリザベス1世 ~愛と陰謀の王宮~」ではプライムタイム・エミー賞(The Prime Time Emmy Award)を獲得した。

 当初は、1979年に「カリギュラ(Caligula)」で演じたCaesoniaなどのみだらな役から、「セックスクイーン」などのイメージが付いてしまったミレン。「そうね、英国では私は脱ぐことで有名なのよ」と、ミレンは米国CBSColombia Broadcasting System)放送の「60ミニッツ(60 Minutes)」でのインタビューで話している。

 ロンドンのナショナル・ユース・シアター(National Youth Theatre)でアートディレクターを務めるPaul Roseby氏は、ミレンの魅力について英紙ガーディアン(The Guardian)に次のように語っている。「彼女は非常にセクシーです。でもハリウッドのけばけばとしたセクシーさではなく、そよ風のようにナチュラルなセクシーさを持っているのです」

 2003年、成熟した女性の魅力を「カレンダー・ガールズ(Calendar Girls)」で披露する一方、「プライム・サスペクト」でジェーン・テニスン(Jane Tennison)刑事局長を、「ゴスフォード・パーク(Gosford Park 2003)」ではウィルソン(Wilson)夫人を演じた。

 王立シェイクスピア劇団(Royal Shakespeare Company)の公演への参加や、ブロードウェー舞台作「ア・マンス・イン・ザ・カントリー(A Month in the Country, 1995)」や「ダンス・オブ・デス(Dance of Death,2002)」で、トニー賞(Tony Awards:正式名称アントワネット・ペリー賞(Antoinette Perry Award))の最優秀演劇女優賞にノミネートされた。

 1997年には、映画「レイ(Ray)」の監督として知られるテイラー・ハックフォード(Taylor Hackford)氏と結婚し、現在はロサンゼルスとロンドンで別居生活を送っている。

写真は授賞式でトロフィーを手にスピーチをするミレン。(c)AFP/Gabriel BOUYS