【5月5日 AFP】(一部訂正)地球温暖化は長期的には進んでいくと思われるが、海洋大循環の変化により10年後には地球温暖化が一時的に中断する可能性があるとする研究結果が、英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 この研究結果を発表したのは、ドイツ北部キール(Kiel)のライプニッツ海洋科学研究所(Leibniz Institute of Marine Sciences)のモジブ・ラティフ(Mojib Latif)教授らのチーム。チームは過去の海洋気象を調査した結果、海流の動きには周期があることを発見。このことから、熱帯大西洋の暖流を北大西洋に運び北大西洋深層の寒流を南に運ぶメキシコ湾流(Gulf Stream)の流れが、10年後ごろに急速に弱まると予測した。

 これにより北米、ヨーロッパなどではわずかながら気温低下が起こり、熱帯太平洋の気温上昇も一段落すると結論づけた。

 国連(UN)の気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)は前年、地球の平均表面温度は1980-99年と比較して2100年までに1.1度から6.4度(摂氏)、今後20年間だけでも10年ごとに0.2度ずつ上昇すると警告している。この予測は、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度に基づいたもの。

 一方で、温暖化は右肩上がり現象ではなく、中断と進行を繰り返すとみる気象専門家も少なくない。その根拠は、地球上の気温を左右する海流の動きには周期があるからだ。ゆっくりと大海を流れる海流の動きは広範囲に及ぶ。また、海中の熱が大気に放出されるまでには、数年を要することもある。

 ラティフ教授は、今回の研究結果は「IPCCの予測を否定するものではない」と強調する。「人為的な原因による地球温暖化の状況は現在考えられているほど悲観的なものではない、と言いたいのではない。気温は基本的に温暖化傾向にあるが、同時に長いサイクルで上下していて、そのためにおそらく今後数年間は現在予測されているほど気温は上がらないだろう」(ラティフ教授)

 共に研究を行ったハンブルク(Hamburg)のマックスプランク気象研究所(Max Planck Institute for Meteorology)研究員、ヨハン・ユンクラウス(Johann Jungclaus)氏によると、温暖化現象は「海岸から山頂を目指すドライブの途中で、いくつもの丘や谷を越えていくようなもの」で、海流の変化によっては地球が冷却化に向かったり、逆に温暖化を促進したりする可能性があると指摘する。

 英国気象庁ハドレー気象研究センターの研究員、リチャード・ウッド(Richard Wood)氏は、「地球温暖化の防止対策を強固なものとするためにも予測結果の多様性は望ましい」とのコメントをネイチャー誌に寄せ、ラティフ氏らの研究の意義を認めている。その一方で、ラティフ氏らの研究がメキシコ湾流のみに着目し、海流の動きに影響をもたらす塩分濃度には触れていない点に疑問も呈している。(c)AFP