【2月28日 AFP】昨年のカンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で、最高賞パルム・ドール(Palm d’Or)のワンちゃん版にあたる「パルム・ドッグ(Palm Dog)賞」を受賞した俳優犬のアギー(Uggie)は、26日のアカデミー賞(Academy Awards)での『アーティスト(The Artist)』の5冠の快挙で、再び注目の的となった。

 だがアギーはまもなく俳優犬を引退する。トレーナーのオマー・フォン・ムラー(Omar Van Muller)さんは、『アーティスト』をアカデミー賞に導いたアギーは余生をゆったりと過ごす権利を獲得したのだと語る。

 26日のアカデミー賞授賞式に、ジャックラッセルテリアのアギーは黒のちょうネクタイを付けて登場。『アーティスト』のミシェル・アザナヴィシウス(Michel Hazanavicius)監督は、受賞スピーチでアギーのことをねぎらった。

「犬のアギーに感謝を伝えたい。彼は別に興味がないかもしれないし、私が言ってることを理解しているかどうかもわからない。でもありがとうよ」とアザナヴィシウス監督は語った。

■無名の下積み時代から栄光のアカデミー賞へ

 オマーさんはAFPの取材に「アギーの行動の多くが脚本に書かれていないものだった。だが、やり方がわかっていたのでアギーはそれをやった。そして監督が映画に採用した」と語った。

 アギーはずっと前から2本足で歩いたり芸を披露することができたものの、『アーティスト』の配役を得るまでは人生の大半を無名の俳優犬として過ごした。

 アギーの人生が突然変わったのは、昨年のカンヌ映画祭に登場してパルム・ドッグ賞を受賞したときだった。以来、アギーは欧州各地の映画祭に映画スターたちと参加し、米ハリウッド(Hollywood)で各映画祭が始まるとそこで芸を披露した。

 前月には『アーティスト』と『恋人たちのパレード(Water for Elephants)』の演技で、素晴らしい演技を披露した俳優犬に贈られるハリウッドの「第1回ゴールデン・カラー(Golden Collar)」賞を受賞した。

 オマーさんは、アギーの賢さは人々の想像を上回っていたと語る。たとえば、「脚本には『死んだふり』と指示があった。だが、アギーはとても劇的に後ずさりして、それから倒れたんだ。映画でアギーのやったことの多くはアギーの持ちネタだったんだ」と語った。

■引退後はチャリティーにも

 しかし、アギーにも寿命が迫っている。神経系の持病を患うアギーについて、オマーさんは「あいつも年をとってきた。死期が目前という意味ではないが、アギーは人生ずっと働きづめだった。彼は私にとても多くのものを与えてくれた。だから今は撮影の仕事から引退させてやることが重要だと考えている」と語った。

 今後は、ペットを大事にするように呼びかける活動などを行う予定だという。また、アギーは任天堂(Nintendo)の携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS(Nintendo 3DS)」の専用ソフト「Nintendogs+cats」の宣伝キャラクターにもなった。

 オマーさんは「普通ぼくらが作っている映画は、ディズニー(Disney)のためで、子ども向けなんだ。だから楽しいけれどアカデミー賞にノミネートされることはない映画だった。『アーティスト』のような映画に出演し、あのような演技をすることはとてもまれで衝撃的なことだ」と述べ、引退するアギーはすでに十分な成功を収めたと語った。(c)AFP/Leila Macor

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