【2月27日 AFP】(一部更新)26日に授賞式が行われた第84回アカデミー賞(Academy Awards)で、モノクロの無声映画『アーティスト(The Artist)』のジャン・デュジャルダン(Jean Dujardin、39)が、フランス人俳優として史上初の主演男優賞を受賞した。

 ミシェル・アザナヴィシウス(Michel Hazanavicius)監督自らがハリウッドに捧げるラブレターと呼んだフランス映画『アーティスト』は今回のアカデミー賞で、作品賞、主演男優賞、監督賞、作曲賞、衣装デザイン賞の5冠を達成した。

 世界の各賞を席巻している本作で、フランスの人気俳優デュジャルダンはサイレント映画の大スター役を演じ、すでにカンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)、ゴールデン・グローブ賞(Golden Globe Awards)、英国アカデミー賞(British Academy Film Awards)、米インディペンデント・スピリット賞(Independent Spirit Award)各賞の主演男優賞を手にしている。それでも授賞式前には「素晴らしい俳優やアーティストたちと一緒にここにこうしているだけで、すでに受賞したのと同じくらい素晴らしいこと」だと、謙虚で誠実なコメントを発していた。

■フランスのコメディー俳優から世界のオスカー俳優へ

 デュジャルダンは1972年、仏パリ郊外の生まれ。徴兵制の兵役中に演技の才能に気づき、パリのカフェシアターで初舞台を踏んだ後、自らのコメディー一座を立ち上げた。1999年にテレビのコントシリーズ『Un gars et une fille』(男と女)に抜てきされたことが、スターダムを駆け上るきっかけとなる。このドラマでは後に妻となる女優アレクサンドラ・ラミー(Alexandra Lamy)と共演もした。

 その後は映画プロデューサーに好まれ、2002~04年には『Toutes les filles sont folles』(女はすべてクレイジー)、『Les cles de bagnole』(車のキー)といったコメディーシリーズに次々と起用された。大ブレイクとなったのは観客430万人を動員した2005年の映画『Brice de Nice』(ニースのブライス)で、自らが10年前に舞台劇で創造したキャラクターである南仏ニース(Nice)のサーファーを演じ、スターとしての地位を不動にした。

 一方、『Les cles de bagnole』(対抗捜査)では娘を殺害した犯人を追う警官、『Les cles de bagnole』(氷の音)では自分の「がん」の化身の訪問を受けるライターなど、シリアスな役も演じている。

 本作のアザナヴィシウス監督とは2006年にスパイ映画「007」シリーズのパロディ映画『OSS 117 私を愛したカフェオーレ(OSS 117: Cairo, Nest of Spies)』とその次作で顔合わせしている。

 ユーモアを交えたきざっぷりで、よくジャン・ポール・ベルモンド(Jean-Paul Belmondo)と比較されるデュジャルダンは、この大俳優とも2009年に『Un homme et son chien』(ある男と彼の犬)で共演を果たしている。

 デュジャルダンは数日前、米国のエージェンシーと契約を交わしたが、アカデミー主演男優賞を受賞したことで、黄金の街ハリウッドへすっかり活動拠点を移してしまうのではないかという憶測に前もってこう答えている。「米国でキャリアを築こうとする俳優は僕だけではない。僕は今もフランス人俳優だし、これからも、これまでと同じように続けていくつもりだ」

 アカデミー賞主演男優賞にはその他、『明日を継ぐために(A Better Life)』のデミアン・ビチル(Demian Bichir)、『ファミリー・ツリー(The Descendants)』のジョージ・クルーニー(George Clooney)、『裏切りのサーカス(Tinker Tailor Soldier Spy)』のゲイリー・オールドマン(Gary Oldman)、『マネーボール(Moneyball)』ブラッド・ピット(Brad Pitt)がノミネートされていた。(c)AFP/Romain Raynaldy

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