<MODE PRESS特別講義>おしゃれものづくり革命論vol.4「驚きと発見と“ビザールな感覚”」
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【12月13日 MODE PRESS】パリから来日したトレンド・アナリストがキューターを勤める、日本の伝統工芸の審査会に立ち会った。彼がたてたテーマに沿って公募された作品の中から、20点ほどを選び、パリの話題のセレクトショップで発表するというこの企画は、日本の伝統工芸の作品が本場の目利きによって選ばれ、パリで紹介されるというまたとないチャンス! これは経済産業省のクール・ジャパンプロジェクトの一環だ。
■若手作家によるコンテンポラリーな感覚
審査会場に並ぶ作品を一つ一つ眺め、ピックアップするかどうかの判断は、きわめて早い。作品が落ちる理由は、共通していた。「あまりにクラシック!」「何の驚きもない」「日本的すぎる」と、彼は何度もこうつぶやく。一方で、ピックアップする瞬間も、きわめて早い。「これは、文句なく素晴らしい」、と見つけた瞬間に、手は伸びる。
選ばれたのは、主に、若手の作家による個性の強い、コンテンポラリーな感覚の作品群だ。その中には、セラミック界でいま話題の青木良太さんや桑田卓郎さん(写真)の作品も混じっている。
それらの作品を、テーマに沿って、いくつかのイメージのもと物語を描きながら構成して行く。海、光、エネルギーなど、イメージの世界を構成する要素として、作品は選ばれ、組み合わされ、グループ分けされた。物語を伴った世界観の中にとけ込んだ伝統工芸のアイテムたちは、明らかにそこに存在する意味を帯び、生き生きとして見えた。
■いつも何かにおびえる日本
トレンド・アナリストとしての彼の仕事は各国の企業に対するコンサルティングが中心だが、昨今は中国や韓国からの要請が急増しているという。「中国、韓国の企業はいま、ものすごい勢いで発信を続けている。日本にはその勢いは感じない。日本に来るといつも、皆が何かにおびえているかんじがする。不安に包まれているというか。しかも決断が遅いので、貴重なチャンスをたくさん逃している。もっともっと自信をもって、スピーディにどんどん新しいことに挑戦していって欲しい」と彼は力説した。
いまこの時代に、人が何を求めているか? という問いには「驚きや発見のあるものだ。普通のものは、もういらないと皆、感じているはずだ。むしろ、少しビザール(変な)と思えるくらいのものがいい」と答える。大量生産の質があがり、ファストブランドでも十分にトレンディなものが見つかる世の中になったいま、人は「変なもの」「見たことのないもの」を求めているのだと断言する。
■物質に満たされることで満足できた20世紀からの・・・
その視点は、私がプロデュースする伝統工芸の発信プロジェクト「工芸ルネッサンスWAO」のコンセプトとも共通している。”FUTURE TRADITION”と題して集めたおしゃれで新感覚の工芸アイテムを紹介するこのプロジェクトでは、何より「ものとの新しい出会い」「驚き」を重視している。そのことを彼に話すと「まさに同じ感覚だね」「FUTURE TRADITIONという視点は素晴らしい」と、話しは盛り上がった。
私たちは、いま、ものとの出会い、消費に関して、新しいステージに向かおうとしている。たとえばショッピングにおいては、物質に満たされることで満足できた20世紀から、物質を通してその先にあるイメージやインスピレーション、物語を得ることが目的となる21世紀へと、時代を取り巻く空気、消費者の心理は、明らかに進化し初めている。
大量生産から、中量生産や少量生産へ。一過性のトレンドではなく、時代を超えるスタイルを追求する時代へ。トレンド・アナリストの彼と話していて、そんな方向にシフトし初めている産業やマーケットの現状が確認できた気がした。伝統工芸をおしゃれに発信するアクションには、確実にネクスト・マーケットを開拓できるポテンシャルがあると、彼との会話から改めて確信できるようになった。【生駒芳子】
プロフィール:
ファッション・ジャーナリスト/アート・プロデューサー。東京外国語大学フランス語科卒業。 フォトジャーナリストとして旅行雑誌の取材、編集を経験。 その後、フリーランスとして、雑誌や新聞でファッション、アートについて執筆/編集。1998年よりヴォーグ・ニッポン、2002年よりエルジャポンで副編集長として活動の後、2004年よりマリ・クレール日本版・編集長に就任。2008年11月独立。ファッション、アート、ライフスタイルを核として、クール・ジャパン、社会貢献、エコロジー、女性の生き方まで、幅広く講演会出演、プロジェクト立ち上げ、雑誌や新聞への執筆に関わる。工芸ルネッサンスWAO総合プロデューサー、クール・ジャパン審議会委員、公益財団法人三宅一生デザイン文化財団理事、NPO「サービスグラント」理事、JFW(東京ファッションウィーク)コミッティ委員など。エスモード・ジャポン講師、杉野服飾大学大学院講師を務める。
(c)MODE PRESS
【関連情報】
おしゃれものづくり革命論vol.1「ファッションと伝統工芸が出会うとき」
おしゃれものづくり革命論vol.2「ディテールの美は、究極のCOOL JAPAN」
おしゃれものづくり革命論vol.3「礼賛すべき日本のものづくり」
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■若手作家によるコンテンポラリーな感覚
審査会場に並ぶ作品を一つ一つ眺め、ピックアップするかどうかの判断は、きわめて早い。作品が落ちる理由は、共通していた。「あまりにクラシック!」「何の驚きもない」「日本的すぎる」と、彼は何度もこうつぶやく。一方で、ピックアップする瞬間も、きわめて早い。「これは、文句なく素晴らしい」、と見つけた瞬間に、手は伸びる。
選ばれたのは、主に、若手の作家による個性の強い、コンテンポラリーな感覚の作品群だ。その中には、セラミック界でいま話題の青木良太さんや桑田卓郎さん(写真)の作品も混じっている。
それらの作品を、テーマに沿って、いくつかのイメージのもと物語を描きながら構成して行く。海、光、エネルギーなど、イメージの世界を構成する要素として、作品は選ばれ、組み合わされ、グループ分けされた。物語を伴った世界観の中にとけ込んだ伝統工芸のアイテムたちは、明らかにそこに存在する意味を帯び、生き生きとして見えた。
■いつも何かにおびえる日本
トレンド・アナリストとしての彼の仕事は各国の企業に対するコンサルティングが中心だが、昨今は中国や韓国からの要請が急増しているという。「中国、韓国の企業はいま、ものすごい勢いで発信を続けている。日本にはその勢いは感じない。日本に来るといつも、皆が何かにおびえているかんじがする。不安に包まれているというか。しかも決断が遅いので、貴重なチャンスをたくさん逃している。もっともっと自信をもって、スピーディにどんどん新しいことに挑戦していって欲しい」と彼は力説した。
いまこの時代に、人が何を求めているか? という問いには「驚きや発見のあるものだ。普通のものは、もういらないと皆、感じているはずだ。むしろ、少しビザール(変な)と思えるくらいのものがいい」と答える。大量生産の質があがり、ファストブランドでも十分にトレンディなものが見つかる世の中になったいま、人は「変なもの」「見たことのないもの」を求めているのだと断言する。
■物質に満たされることで満足できた20世紀からの・・・
その視点は、私がプロデュースする伝統工芸の発信プロジェクト「工芸ルネッサンスWAO」のコンセプトとも共通している。”FUTURE TRADITION”と題して集めたおしゃれで新感覚の工芸アイテムを紹介するこのプロジェクトでは、何より「ものとの新しい出会い」「驚き」を重視している。そのことを彼に話すと「まさに同じ感覚だね」「FUTURE TRADITIONという視点は素晴らしい」と、話しは盛り上がった。
私たちは、いま、ものとの出会い、消費に関して、新しいステージに向かおうとしている。たとえばショッピングにおいては、物質に満たされることで満足できた20世紀から、物質を通してその先にあるイメージやインスピレーション、物語を得ることが目的となる21世紀へと、時代を取り巻く空気、消費者の心理は、明らかに進化し初めている。
大量生産から、中量生産や少量生産へ。一過性のトレンドではなく、時代を超えるスタイルを追求する時代へ。トレンド・アナリストの彼と話していて、そんな方向にシフトし初めている産業やマーケットの現状が確認できた気がした。伝統工芸をおしゃれに発信するアクションには、確実にネクスト・マーケットを開拓できるポテンシャルがあると、彼との会話から改めて確信できるようになった。【生駒芳子】
プロフィール:
ファッション・ジャーナリスト/アート・プロデューサー。東京外国語大学フランス語科卒業。 フォトジャーナリストとして旅行雑誌の取材、編集を経験。 その後、フリーランスとして、雑誌や新聞でファッション、アートについて執筆/編集。1998年よりヴォーグ・ニッポン、2002年よりエルジャポンで副編集長として活動の後、2004年よりマリ・クレール日本版・編集長に就任。2008年11月独立。ファッション、アート、ライフスタイルを核として、クール・ジャパン、社会貢献、エコロジー、女性の生き方まで、幅広く講演会出演、プロジェクト立ち上げ、雑誌や新聞への執筆に関わる。工芸ルネッサンスWAO総合プロデューサー、クール・ジャパン審議会委員、公益財団法人三宅一生デザイン文化財団理事、NPO「サービスグラント」理事、JFW(東京ファッションウィーク)コミッティ委員など。エスモード・ジャポン講師、杉野服飾大学大学院講師を務める。
(c)MODE PRESS
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おしゃれものづくり革命論vol.2「ディテールの美は、究極のCOOL JAPAN」
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