【12月10日 MODE PRESS】前回、日本人コンプレックスによるギャルの誕生、リアルクローズについて探っていったが、日本におけるファッション文化の発展は、もちろんギャル文化だけではない。日本のマスメディアの特性としてファッションをスタイルごとに〇○系と細分化する傾向にあったが、最近ではその系統ごとの境界線がうっすらと見え辛くなっている。

-変化する「憧れ像」

 前回のテーマに例えると、元祖ギャル系要素でもある「カラコン」「金髪」の2つを取っても同じで、ギャルの反対語のように扱われていたいわゆる原宿系の女の子も用いているのだ。それらの要因は、従来のブランド志向が衰退したということと、ファストファッションブランドの台頭が大いに関係していると考える。

 「トレンドど真ん中のデザイン」と「誰にでも手が届く価格帯」によって、今まで手にしなかったアイテムに挑戦することができるというのも理由のひとつではないだろうか。また強烈なファッションアイコンが不在な中、マスの憧れの的にも変化ができてきている。

-賢く贅沢を手に入れる楽しみ

 溢れかえるモノの中で、次に私たちが趣をおけるのは日常を贅沢に演出するようなシチュエーションだろう。特に20代も半ばを過ぎると結婚式や二次会に出席する回数も増えてくる。facebookなどでシェアされることを考えると、何度も同じドレスを着回すわけにはいかない。しかし毎回装いをそろえるのは、金銭面も含めなかなか難しい問題である。

 そんなときに役立つのが「ドレスのレンタルショップ」で、トータルコーディネートを一式レンタルできるというサービスだ。なかには現役スタイリストがコーディネートしてくれるというシステムを提供するショップもあり、自分だけのコーディネートという特別感を楽しむことができる。その他、映画SEX and the CITYにも出てきたようなハイブランドのバッグをまるでDVDのようにレンタルできるレンタルショップも日本でも徐々に普及してきている。非現実的をバーチャルと例えていえば、SNSというツールもまた同じと言えるだろう。

-個人が「提供」する楽しみ

 ブロガー元年と言われた2012年も残りあとわずか。海外ブロガーの代名詞ともいえるルミ・ニーリーのような強烈なファッショニスタはいないにしても、「ブロガー」や「ファッションブロガー」という言葉の認知度が増えたのではないだろうか。

 ブログやSNSをツールとして、「個人」がメディアを持てる時代になったように、今後は、個人が運営する販売経路が発展していくと考えられる。つまり、独自のECサイトである。

 ネット普及率が日本よりも上回る韓国では、オルチャン(日本に例えると読モやブロガーのような存在)がそれぞれのECサイトを運営していて、個人が運営するECサイトの数は約3000件ほどある。またその市場は120億円だとも言われている。

-先日のある出来事

 友達と二人で鏡越しにiPhoneで撮影した写真をツイッターに投稿したときのこと。その写真に写っていた友達が私の投稿を公開リツイートしたところ、その友達宛に“写真に写り込んでいたミニーちゃんのiPhoneケース”を「ほしい!」というリプライが複数件あったそうで、どこで購入できるのか彼女は質問攻めになっていた。

 さらに、ほんの数時間後にその中の一人の外国人女性が同じiPhoneケースをオークションで落札したという報告のリプライまであり、私たちは驚いた。

 海外から日本のアイテムを探すといっても、実際購入まで辿り着くにはそうそう簡単ではないだろう。彼女はその数時間の間、どれほどの検索をかけたのだろうか。ブロガーである私自身が、もしも販売経路を持っていたら、即座に彼女へ商品URLをリプライできたのにと考えた。

 ECサイトの立ち上げにはいろいろな問題がありそうだが、最近では、「顔面広告」で話題となったliberty社が、ネットショップを無料で作成できる「Base」というサービスをスタートさせた。前述のオルチャンのように、私たち「個人」が世界共通語「東京カワイイ」をダイレクトに販売する日も近そうだ。【大田明弥】

-プロフィール-

モデル兼デザイナー兼ブロガー。1987年生まれ。杉野服飾大学卒業と 同時期に「リメイクができるモデル」として注目され、ブログへのアクセス数が急増。1日最高84万アクセスを記録したのち、リメイクブロガーとして「東洋 経済」やNHK「東京カワイイTV」日本テレビ「NEWS ZERO」などへ出演。現在は、企業や多数のアパレルブランドとコラボシリーズを発表するなど、デザイナーとして活動中。(c)MODE PRESS

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<TOKYO CLOSET特集ページ>その1
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