【2月17日 MODE PRESS】カラフルな色遣いにポップなモチーフ、まるでかわいらしいお菓子やひっくり返したおもちゃ箱のような独特の世界観。その中に見え隠れするシニカルなエッセンスとユーモアが、幅広い年齢層に人気の「ミントデザインズ(mintdesigns)」。昨年ブランド創立10周年を迎え、ますます活動の幅を広げるデザイナーの勝井北斗(Hokuto Katsui)と八木奈央(Nao Yagi)がこれまでの10年を振り返りながら今後についても語った。

■今振り返ってみてまず思うこと

八木:1つ1つのことをやってきたら、気がつけば10年経っていたという感じ。時間を感じている余裕はなく、次はコレをやりたいという連続の10年だった。まだまだこれをやらなければ!とういうビジネス面の課題や、次から次へとでてくるクリエイティブ面のアイデア。ブランドをやっていくというのは、とにかくそれらと向き合う日々の繰り返し。

■10年前のビジョンと現在

八木:物作りの姿勢は10年前に思い描いていたスタイルを崩すことなく、妥協することもなくやってこられた。ただビジネス面においては、もっとこうなっているだろうと甘く考えていた部分があったと思う。実際は2、3年遅れくらいのスピードで現在進んでいる。

勝井:デザインや物作りは学生時代から向き合ってきたけれど、ビジネスに関してはブランドを始めてみて初めて思い知らされることが多々ある。物作りを続けていく中でビジネスがいかに大事なことかをおもい知らされた。リーマンショックなどさまざまな時代背景の影響もあり、若干予定していた10年と違う部分はあるけれど、ブランドを始めた頃に思い描いたビジョンと大きく食い違うような点はないと思う。

■転機と確信

八木:ひとつは、ブランド5年目で渋谷パルコに出店したこと。直接、お客さんの声を聞くことが出来る貴重な場であり、ブランドとして視野が広がった大きなきっかけでもある。イタリアで開催されたミラノサローネ・TOKYO FIBERへの出展やブラジルでコレションを発表させていただく機会に恵まれたこともひとつの転機。海外に自分たちのクリエーションを持って行ったときの現地の人たちの目線や感覚は、それまで経験してきたものとはまた違った意味で新鮮だった。

勝井:ファッションの場合、海外で発表をする際はパリやNYで合同展示会に出展することやショールームと契約をすることが主として考えられがちだが、自分たちには自分たちにあった見せ方やPRの仕方があると気がついた。“ファッション”という分野にカテゴライズしてしまうのではなく、広い意味での“デザイナー”として、仕掛けていくことも可能性としてありだと感じた。パリで初めて「ミントデザインズ」として注目されたのは、ファッションではなくマスクだったように、プロダクトという意味でデザインを受け入れてくれた。自分たちに合ったやり方が存在して、ルールや縛りにとらわれることのなく、日本とはまた違った“自由さ”が海外にはあると確信した。

■ファッションのチカラ

八木:10年を振り返って印象的なショーというと、12回目の “ The Flying Girls 1808 “、10回目の ” ダメに生きる。“、15回目の ” ミントデザインズの反抗期 “、震災後に発表した19回目の ” Fashion Surgery (A NEW HOPE)“ 。震災後の19回目は、正直発表すべきか迷った。けれど今思えばやって良かったなと・・・10年全部そろった状態を見ることができた時、とても感慨深かった。

勝井:ファッションは衣食住の1つ、ということは人が生きていく中で間違いなく必要なものだと思う。震災後、1,2週間経った時、周囲の気持ちが沈んでいるなか、カラフルな服を着たい!と沢山のお客さんがショップに足を運んでくれた。せめて着るもので気分を変えたいとお買い物されていく姿をみながら、ファッションのチカラってこういうことなんだなと感じた。

八木:平和な環境のなかで、ファッションのことだけを考えていられるのであれば、それはそれで幸せなこと。人間の知的好奇心をくすぐる存在だと思うし、新しいことを探求するには最高の存在。その一方で、とても原始的で根本的なことかもしれないが、人間の気持ちや気分を左右することができる存在でもある。明るい色の服を着ることで気持ちも明るくなれるというのは、ファッションが持つチカラのひとつだと思う。

■ファッションを通して・・・

八木:デザインのひとつとして、人がステキな服を着ている風景が好きです。デザイン感度が高い状態、そんな街や環境ができあがってほしいと常に思っている。ステキなものを着て欲しいし、ステキな街並みをつくりたい。建築家の人が思っているように、私たちも見ていて気持ちの良い風景をつくりたい。そのなかでのファッションの役割や平均値を上げて行けたらいいな。

勝井:ファッションというよりデザインという大きな枠でのアプローチを、今後は海外を視野に入れて取り組んでいきたい。そのための準備も実際取り掛かっている最中なので、環境が整った時に仕掛けて行ければと思う。その時は、ライバルであり同志でもある同世代のデザイナーやブランドと共に世界に挑戦し戦っていきたい。【岩田奈那】(c)MODE PRESS

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