メンズ美容~その価値観の変遷:第4回「ヒゲは男のメイク!?」ヒゲの価値観はどう変わってきたのか
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【12月27日 MODE PRESS】 ~脱毛したがる若い男性たち~ 10~20代の若い男性を中心に完全脱毛の傾向が見られる。たしかにヒゲ剃りは肌に正しく行わないと、肌に大きな負担をかける。環境要因などによって敏感肌傾向の男性が増えており、ヒゲ剃りによる肌荒れを防ぐ方法としてヒゲ脱毛はひとつの選択肢となる。 しかし、この傾向、本当に当人たちのためになるのだろうかと疑問を感じてもいる。人の好みも、社会の流行も時代とともに変化する。最近、ヒゲスタイルの復権が認められている中、安易に永久脱毛をするのはあまりお勧めできない。というのも、ヒゲは意外と役立つから。 男性にとってヒゲはかつて権威の象徴だった。歴史を振り返ってみても貴族や武士は立派に整えたヒゲを蓄えていた。強さが重要だった戦国時代、豊臣秀吉はつけヒゲをしていたとか。近代〜の紙幣を見ても、政治家の写真を見ても男性にはほぼヒゲがある。 アラブではヒゲのない男性は軽んじられるので駐在員はヒゲを生やす。イタリアでは体毛も含めて毛深いことがセックスアピールになり得るとか。 もちろん「ヒゲで男らしく見せよう」などと 時代錯誤な主張をしたいわけではなく、ヒゲを取り入れることによって自分の魅力を新たに気づくこともあると知って欲しいだけ。 ~ヒゲがタブーになった時代~ 日本では高度経済成長期がヒゲの在り方を変えたのでないか、と個人的に思っている。以前、この時代を「スキンケアをすることに時間をかけるのが女々しいと思われていた時代」と表現したが、ヒゲもやはりきちんと揃えようとすると時間がかかる行為である。それもヒゲが遠ざけられたひとつの原因だろう。ずいぶんと日本的だと思われがちだが、アメリカでも似たような現象があったそう。 しかし、近頃、フィリップスが行った調査は興味深かった。管理職に「あなたが新入社員として入社したときと比べて、社会全体としてビジネスシーンにおけるヒゲに対する寛容度は変化していますか?」と質問したところ、69%の管理職が「寛容になっている」と回答。さらに「部下がヒゲを生やしても問題ない」という管理職は70%にものぼっている。職種の差はあれ、これはヒゲ復権といってもいい流れだろう。 そして、女性の許容度は中堅社員に対して「仕事ができそう」が27.3%、管理職に対しては実に72%が「貫禄がある」と好印象。しかし、新入社員のヒゲに対しては62.3%が「チャラそう」と回答した。ヒゲが似合うか否かは年齢も大きく影響を与えるということか。 ~ヒゲを生やすメリット/デメリット~ では、具体的にヒゲを生やすとはどういうことだろう。まず、メリットとして、表情に変化がつく。ヒゲを生やすだけで、顔の印象が劇的に変わるのだ。女性と違ってイメチェンは男性はあまり経験がないはずだから、これは結構楽しいはず。次にコンプレックスを解消してくれる。例えば、丸顔の人はヒゲで輪郭を作ることでシャープに見せられ、また、頭髪が薄くなってきたらヒゲで相手の視点をずらす効果だってある。輪郭や生え方によって様々なヒゲスタイルを楽しむことができるのだ。 もし、永久脱毛をしてしまうと、この男ならではの楽しみを放棄してしまうことにもなる。不可逆的なので、もうヒゲのある生活には戻れない。そして、ヒゲ剃り自体もまた楽しみになれる。基本、男はメンテ好き。靴を磨き、車を整備するようにヒゲをメンテ自体を楽しむ。道具にこだわり、手順を極めることでヒゲ剃りは男の儀式へと昇華するのだ。 一方で、先述したが、脱毛のメリットは肌がスベスベになること。ヒゲ剃りは毎回、強制的にピーリングをするようなもので、その負担がなくなれば、肌の調子はよくなる。ヒゲには油分が多く含まれており、さらに密集して生えるのでコスメの浸透が物理的に悪くなるのも事実。また丁寧に洗わないと汚れも溜まりやすくなる。そう考えると、ヒゲはメンテをしなければ、男性の肌を傷める原因にだってなりかねない。 とはいえ、個人のスタイルがあってこそのヒゲ。永久脱毛でツルスベ肌を目指すのもひとつのスタイルだし、上手につきあって自分の顔の一部にしてしまうのも有効。いろいろと試してみるのといい。 女性だってメイクが最初から完成されるわけではない。流行やその時の気分によっても大きく左右される。ただし、どちらにしてもきちんとメンテされていることが絶対条件で、不潔な印象を与えるヒゲは厳禁。むさ苦しい無精ヒゲと、無精ヒゲ風のアレンジは全く別物なのだから。【藤村岳】 プロフィール DANBIKEN~男性美容研究所~を主宰する男性美容研究家。 男性の身だしなみの専門家としてテレビ・ラジオの出演や、雑誌・ウェブでの執筆活動を行う。「美しくなるよりも、嫌われない美容」が男性には必要とのモッ トーがあり、やりすぎない男性美容を提案している。 また、男性のためのパーソナルカウンセリングや講演・イベントなども開催。 最近は男性コスメ商品の企画開発、コンサルティングなども行っている。 (c)MODE PRESS 【関連情報】 第1回「なぜ、今、メンズ美容なのか?~肌がビジネスツールになる時」 第2回「スキンケアを始めた理由/やめた理由 男の動機は女次第」 第3回「クサイと言われる恐怖:不快な体臭で人格を否定される!?」 <インフォメーション> ヒゲとビジネスに関する調査 フィリップス調べ<外部サイト> 男性美容研究所 公式サイト<外部サイト>