気候変動の影響、すでに全米各地に 米政府が警鐘
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【5月7日 AFP】米ホワイトハウス(White House)は6日、気候変動に関する主要報告書を通じて、人的要因による温暖化の深刻な影響は、すでに全米各地におよび始めており、緊急に行動することが必要だと訴えた。
この報告書は、官民の科学者ら100人以上が4年かけてまとめた「全米気候評価(National Climate Assessment)報告書」で、世界が温室効果ガス排出の影響に対する取り組みを行わないならば、海面上昇や干ばつ、山火事、疫病発生などのリスクが高まると警告している。
オバマ政権の科学技術顧問、ジョン・ホールデン(John Holdren)氏は報告書について、気候変動が「遠い将来の脅威」ではないことを示したと評価した。さらに同氏は、今回の全米気候評価はこれまでで最も声高にそして明確に警鐘を鳴らしていると述べている。
バラク・オバマ(Barack Obama)大統領は2008年米大統領選挙の運動期間中、気候変動への取り組みを優先課題とし、世界最大のCO2排出国の1つである米国を、この問題での取り組みを率先するリーダー国とすると、繰り返し明言してきた。
だが、排出ガス規制には企業寄りの議員らが激しく抵抗したため、オバマ大統領は議会の説得に失敗。大きな取り組みはできていない。代替策として、オバマ大統領は発電所のCO2排出基準の厳格化など独自の政策を打ち出している。
■影響は広範囲に
気候変動の影響として報告書は、米国で最も人口の多いカリフォルニア(California)州での干ばつ、オクラホマ(Oklahoma)州では大草原の火災、フロリダ(Florida)州を中心に東海岸(East Coast)での海面上昇を指摘。ミシシッピ(Mississippi)州などの低地では海面上昇による浸食が始まっているという。
ウェブサイト「www.globalchange.gov」に掲載された報告書は、地元資本のある調査の結果として、アラバマ(Alabama)、ルイジアナ(Louisiana)、ミシシッピ、テキサス(Texas)各州の沿岸部では、2030年までに毎年230億ドル(約2兆3300億円)の損失が出る可能性があるが、その半分は気候変動に関連したものになるとの試算を紹介している。
報告書によると、全米におよぶ地球温暖化の影響は均一ではない。アラスカ(Alaska)への影響は大きく、国内の他州と比べて受ける影響は2倍に上るという。
報告書はさらに、北極の夏季の海氷の減少はこれまでの予測よりも速く、21世紀半ば以前に北極の海氷は事実上消滅すると述べている。それにより海洋生態系に異変が起こるとともに、船舶が頻繁に航行するようになり海洋開発の機会が増える。その一方で、海岸浸食が進み沿岸地域の街などにおよぶ危機が増す。
さらに、永久凍土でも温度が上昇し、その結果、土は乾燥し山火事が増え、野生動物は生息地を追われ、インフラ設備の保全にも膨大な費用がかかる。
米国経済の生命線ともいえる道路や各施設も海面上昇や強力な熱帯暴風雨の脅威下にあるという。(c)AFP/Tangi QUEMENER