■快適、しかも聖職にふさわしく

 スヨディンさんのコレクションはインターネットでも購入できる。ウェブサイトでは若くおしゃれでスリムなモデルたちが、スヨディンさんがデザインした服を紹介しており「聖職者は厳格で古くさい」というイメージはない。購入したある聖職者は、ウェブサイトにこんなコメントを残している。「いかにも快適そうですが、仕事着としても優れている。挑発的にならない範囲で、女性の体のラインを美しく見せてくれる」

 ボロース大学繊維学部(Swedish School of Textiles, University of Boras)の講師、アサ・ハグレン(Asa Haggren)さんは「聖職者もあなたや私と同じように、着る服によって人間だということを示したいのだ。距離ではなく親近感を生み出したいのだ」という。

 当初は懐疑的な声も寄せられたと、スヨディンさんは明かす。しかし、それが間違っていたということを時間が証明してくれた。「タイミングが良かった。ニーズをきっちり埋めるものができた」

 スヨディンさんは、顧客たちが抱える虚栄心については話さない。それは彼女の顧客たちが、俗世の考えに屈しないからというわけではない。「ファッションとはしばしば、ニーズを生み出すことだったりする。けれど、ここには元々、満たすべきニーズがあった。とても意味があると思う」

 スヨディンさんのコレクションを10年以上愛用しているというエリン・ヒルデーン・ガートナーさんは「私はスウェーデン国教会に属してキリストの言葉を伝えている。その際に快適な服を着ることで、自信を持ってメッセージに集中することができるようになる」という。

 スヨディンさんが目指すのは「モダンな社会に生きるモダンな聖職者の感覚の発信」だ。世界のプロテスタント教会の大半では、女性も牧師に叙任される。スウェーデンの牧師は女性が2086人、男性が2187人とほぼ半々。近年ではさらに男女平等が進んでおり、今年は女性23人、男性11人が叙任されることになっている。

 プロテスタントでは一般的に、牧師は教会で聖職に就くための準備勉強をしてきた宗教専門家、神学者だとみなす。カトリックの司祭が「召命」、つまり神に呼ばれて司祭になるとされる点とは異なる。またカトリックでは、女性が司祭に叙任されることはない。

 スヨディンさんは現在、世界中に4000人の顧客を抱えており、コレクションのデザインと販売に日々力を注いでいる。「顧客に会い、品物を包装し、丁寧に発送します」。顧客と特別な絆を維持していきたいという。

 現在、スヨディンさんは全ての服を自分でデザインし、仕立師2人がアシスタントを務めている。コレクションの大半はポルトガルの工場で作られているが、近くその一部はイタリアで作られるようになるという。(c)AFP/Camille BAS-WOHLERT