<菅付雅信:新連載「ライフスタイル・フォー・セール」>第七回:ビームス設楽代表が語る、物欲なき時代のライフスタイル・ビジネス
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【2月24日 MODE PRESS】「今日のファッションビジネスは単に衣服にとどまらず、生活全般に関わるあらゆる領域に関与し、商品そのものの提供から、物を媒介として高揚感や快適 性など何らかの満足を提供する産業へと進化しています」とはビームス(BEAMS)の設楽 洋(Yo Shitara)代表取締役の言葉。
彼は会社の公式サイトの「トップメッセージ」で、ファッションビジネスが生活全般に関わる産業へと進化していると捉える。そして、「良質な日常生活を謳歌したいと思っている人達に向けて、伝説でも プレステージでもない新しい世代のルール(生き方)をつくること。それが “Happy Life Solution Company”としてのビームスが果たすべき役割」だと続ける。そのビームスのライフスタイル志向が最近目覚ましい。
2012年から「ビーミングライフストア(‘12)」「レムソンズ(‘12)」「BEAMS PLANETS(‘13)」「ワークハンズ(‘13)」)など、既存のファッション商材では捉えきれない商品を扱う業態の店舗を続々とオープンさせている。その背景には何があるのか? 1976年「アメリカンライフ・ショップ ビームス」という店名からスタートし、「最初からファッションを売るというよりも、ライフスタイルを提案してきた」と語る設楽氏に、ファッションからライフスタイル産業へ変わりつつあるビームスの明日のヴィジョンを伺った。
■服よりも生活に興味があった
設楽社長がビームスを創業したのは、25歳のとき。「男の子はアメリカに、女の子はパリに憧れるような時代」だったという設楽社長は、学生時代にアメリカン・カルチャーの影響を強く受けて育った。ホームドラマや洋楽から始まり、学生時代には湘南や横須賀でアメリカ人と友達になって、米軍基地の中で行われているバザーに入れてもらい、夢に描いたようなアメリカの生活を目の当たりにする。そうした憧れが募り、「アメリカの生活が買える店」を自分で作りたいという思いで設立されたのが、ビームスだ。
「当時は、セレクトショップという言葉さえなかった時代でしたが、もともとは、1人の人間のフィルターを通したものを提案して、“好きな人この指止まれ”という感覚から始まったものです。僕はビームスを始めるとき、きっとUCLAの学生はこんなモノを持っていて、こんな生活をしているのだろうと思いながらモノを集めていました。だから、洋服やデザイナー好きだったというよりは、洋服や生活雑貨というある種のギアを手にして、それを道具にどんな生活を送ろうかというのが興味のあったところです。とはいえ、創業当時は情報もモノもなかった時代ですから、知らない情報、見たことのないモノを提案してあげることが、セレクトショップの第一の役目でした。しかし、今は少し違います。数ある情報のなかから絞り込んであげることが我々の役目になりました。そういう意味で、セレクトショップは十貨店だと思っています。百貨店に行けば何でもあるけれど、自分にとっていらないものもあります。また、もともと超マニアな人であれば、最初から専門店に行った方がいいですよね。セレクトショップは、これだけあれば必要十分というものを絞り込んであげる。それほどの通ではないけれど、ある程度絞り込んで欲しいのであれば、十貨店に来てほしいのです」
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