豪のクジラ座礁急増、栄養失調が原因か
このニュースをシェア
【5月30日 AFP】オーストラリア西部ウエスタンオーストラリア(Western Australia)州沿岸でザトウクジラの座礁が急増しているのは、これらのクジラが栄養失調に陥っていることに関連していると考えられるとの調査報告が、28日に豪パース(Perth)で開かれた獣医学学会で発表された。
同学会で研究発表を行った豪マードック大学(Murdoch University)の研究者、カーリー・ホリオーク(Carly Holyoake)氏によると、大半が子どもと若い個体からなる一連の死骸を解剖した結果、これらのクジラは栄養失調だったことが明らかになったという。
ホリオーク氏は「脂身サンプルの脂肪分の死後検査・分析により、大半の子クジラが極度の栄養失調状態にあったことが明らかになった」と語る。
「活動力、体温調節力、浮力などを得るために必要な脂身の脂肪分が、大半のクジラで非常に低かった」
「また、ある個体は肺炎を発症していた。肺炎が呼吸困難を引き起こし、死に至る一因となったのかもしれない」
研究チームによると、豪州西部沿岸で座礁したザトウクジラの数は、1989~2007年は年間約2~3頭だったが、2008年には13頭に急増。2009年には46頭とさらに大幅に増加し、2010年は16頭、2011年は17頭で、うち14頭が子ども、3頭が若い個体だった。
ホリオーク氏によると、ウエスタンオーストラリア州の南岸地域で発生したクジラの座礁については「栄養不足が原因」である可能性が最も高いと研究チームは結論付けているという。
こうしたクジラの栄養不良を招いた原因としては、オキアミの商業的漁業の増加と、オキアミの個体数に対する気候温暖化の影響が考えられるという。ザトウクジラは南極でほぼオキアミのみを食べて暮らしている。
ザトウクジラは毎年、南極海域と豪州沿岸海域との間を回遊しており、南半球の冬の時期には比較的水温が高い海域で繁殖活動を行うために北上する。
だが研究チームによると、一部の雌クジラは、出産前にウエスタンオーストラリア州北岸に到着することができず、既知の繁殖地より数千キロ南方で子どもを産む個体も多い。
ホリオーク氏は「南極で餌の存在量と分布が減少した結果、捕食に要する時間が長くなったことが原因となり、妊娠した雌クジラの一部で回遊時期の遅れや体内蓄積脂肪の減少が発生している可能性が高い」と説明している。(c)AFP