「自由」の国・米国でティックトックを禁止する理由とは
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【2月4日 CNS】最近、ティックトック(TikTok)が米国市場からの撤退を命じられる可能性があることを受け、多くの米国人ユーザーが「ティックトック難民」と自称し、中国のソーシャルメディア「小紅書(Red)」に大量に移行している。なぜティックトックは米国のネットユーザー、特に若者にとって不可欠な存在なのか?なぜ「自由の国」とされる米国のネットユーザーが、ティックトック禁止を避けるために中国のプラットフォームへ移動しているのか?
その理由は単純である。ティックトックが米国のユーザーにとって必要だから、使いやすいから、そして禁止の可能性に対する不満の表れだからである。
2017年にショート動画プラットフォームとして登場したティックトックは、瞬く間に米国市場で人気を博し、現在では米国国内で1.7億人のユーザーを持ち、月間アクティブユーザー数は1億人を超えている。ティックトックは、独自のアルゴリズムを活用し、ユーザーの興味や行動、嗜好に基づいて個別の動画コンテンツを精確に提供する。また、コミュニティとしての一体感や活気に満ちた交流が魅力となり、多くのユーザーを引きつけている。さらに、豊富な編集ツールやエフェクト機能(音楽ライブラリ、フィルター、ARスタンプなど)を提供し、誰でも簡単にクリエーティブな動画を制作できる点も人気の理由だ。
経済的な観点から見ると、ティックトックは現在、米国のポップカルチャーを推進する重要な存在となっている。一部のマイナーな音楽ジャンルはティックトックを通じて急速に人気を博し、レコード会社もこれらの市場の可能性を再評価するようになった。ユニバーサル・ミュージック・グループ(Universal Music Group)、ワーナー・ミュージック(Warner Music)、ソニーミュージック(Sony Music)といった大手レコード会社もティックトックと提携し、「共生関係」を築いている。
英国のシンクタンク、オックスフォード・エコノミクス(Oxford Economics)の報告によると、ティックトックは米国国内で700万の中小企業にマーケティングプラットフォームを提供し、22万4千人の雇用を創出している。また、2023年には米国のGDPに242億ドル(約3兆7544億円)の貢献を果たした。もしティックトックが禁止されれば、これらの企業や個人は大きな経済的損失を被ることになる。
現在、ティックトックは1億人以上の米国人にとって日常生活の一部となり、ニュース、エンターテインメント、ソーシャルコミュニケーションの重要なプラットフォームとなっている。従来の米国のメディアと比べ、ティックトックはコンテンツ制作者に対し、より自由な表現の場を提供し、多様な意見や情報にアクセスしやすい環境を整えている。
しかし、2020年以降、ティックトックは米国政府からさまざまな規制の対象となってきた。政府は「国家安全保障上のリスク」を理由に、親会社である字節跳動(バイトダンス、ByteDance)に対し、2025年1月19日までにティックトックを分離・売却するよう要求した。これに従わなければ、米国市場から締め出されることになる。この決定により、米国のユーザーは愛用するソーシャルプラットフォームを失い、自由に交流し、情報を共有し、クリエーティブな活動を行う機会が制限される可能性がある。
こうした状況が、米国のユーザーが小紅書に流れる要因となっている。規制による障壁は文化交流を完全に止めることはできない。世界の情報流通が加速するなか、文化の壁を越える動きは止められず、むしろ今後さらに加速していくことが予想される。(c)CNS/JCM/AFPBB News