【8月29日 東方新報】世界各国と同様に中国でも、大手テクノロジー企業を中心とする人工知能(AI)の急速な普及と汎用を背景として、エネルギー需要の急増や二酸化炭素(CO2)排出量の増加といった大きな問題に直面している。

 米国IT大手「グーグル(Google)」は最新の環境報告書で、過去5年間で、米国の巨大ハイテク企業のCO2排出量が48パーセント急増したことが明らかにした。

 AI関連のエネルギー消費量の多さは以前から懸念されていた。専門家によると、AIを稼働させるには膨大なエネルギーが必要で、データセンターのコンピューティングと運用のための電力だけでなく、大量のチップ、サーバー、関連機器の生産と輸送にもエネルギーが必要で、これら全てがCO2排出量の増加に大きな影響を与えているという。

 そして、ハイテク企業や新興産業が急成長している中国でも、この問題への適切な対処が急がれている。

 グリーンデータ・ソリューション・プロバイダーの「北京中科合北京中科合盈数据科技(Hoyinn)」と「中国信息通信研究院」が6月に発表した「グリーン・コンピューティング・パワー・インデックス白書」では、中国のデータセンターのエネルギー消費量が2030年までに4000億キロワット時を超過すると予測している。

 もしも「再生可能エネルギー」の利用が大幅に増えなければ、こうしたデータセンターからのCO2排出量は、2030年までに2億トンを超える可能性があるという。

 クリーンな新型の電力確保を目指す「新型電力系統技術創新連盟(New-Type Power System Innovation Alliance)」の専門委員の1人は「クリーンエネルギーが主要な電力源になるまで、AIの大規模な導入は企業の短期的な炭素排出量の増加につながることは避けられない。AIを早期に導入する企業はこのコストを覚悟しなければならない」と警告している。

 この問題に対して、国家発展・改革委員会は7月、他の関係部門と共同で「データセンターの炭素排出量を抑えたグリーンな発展のための特別行動計画」を発表した。

 この計画では、2025年に向けて、より合理的な国家データセンターのレイアウト、電力消費効率(PUE)を1.5以下にすること、再生可能エネルギー利用率を年間10パーセント増加させることなどの目標を設定している。

 PUEとは、データセンター全体の消費電力をセンター内で使用されるIT機器の消費電力で割った数値で、数字が1.0に近いほど高効率となる。

 近年、中国の大手ハイテク企業は、グリーン・コンピューティング・パワーを推進するために積極的な対策を講じており、安定したクリーンなエネルギーの確保のためにエネルギー事業分野に進出することも多くなっている。

 中国インターネット検索大手「百度(バイドゥ、Baidu)」は再生可能電力の調達を増やし、自社で再生可能エネルギープラントを建設した。

 中国ハイテク大手「阿里巴巴集団(アリババグループ、Alibaba Group)」は一貫してグリーン電力取引に取り組み、分散型太陽光発電システムを建設し、長期クリーン電力購入契約を結んでいる。

 また中国IT企業大手「騰訊(テンセント、Tencent)」の「天津(Tianjin)ハイテク・クラウド・データセンター」の分散型新エネルギー・マイクログリッド・プロジェクトが、昨年正式に送電網に接続され、同社にとって5番目の再生可能エネルギー・プロジェクトとなった。その総設備容量は10.54メガワットで、データセンターのエネルギー効率のさらなる向上を目指しているという。(c)東方新報/AFPBB News