【7月18日 Xinhua News】中国科学院南京土壤研究所、西北農林科技大学、青島農業大学などの研究者がこのほど、共同の取り組みによりコムギの新しい耐塩性遺伝子TaSPL6-D-Inの「解読」に成功し、山東省東営市など塩類・アルカリ性土壌の土地で行った試験品種の栽培では収量が5~9%向上した。関連する研究成果は遺伝学に関する国際学術誌「Nature Genetics」の最新号に掲載された。

 論文の責任著者を務めた同研究所の王萌(おう・ぼう)副研究員によると、コムギの主産地はちょうど土壌の塩性化発生率の高い地域であり、春はコムギの子実の登熟にとって大切な節間伸長期だが、土壌の塩類集積が最も進む時期とも重なり、コムギの成長と収量が深刻な影響を受ける。このため、コムギの塩類・アルカリ耐性遺伝子を特定し、標的遺伝子に絞ってコムギの塩類・アルカリ耐性を改良することが急務だという。

 王氏によると、共同研究チームはまず山東省東営市や江蘇省東台市など、塩類・アルカリ性土壌の土地での、500以上のコムギ品種と系統の大規模農地での長年にわたる収量、生理指標や分子指標などについて体系的な分析を行った。それに基づき、集団遺伝学の手法を用いて、耐塩性との間に顕著な負の相関が認められるコムギの遺伝子TaSPL6-Dを特定し、さらに遺伝学や生化学の実験的手法を用いて、TaSPL6-Dがさまざまな形でコムギの耐塩性に重要な役割を果たす遺伝子の発現を抑制し、そこからコムギの耐塩性を抑制することを明らかにしたという。

 自然変異により、中国の一部地域のコムギ農家の品種にはコムギの主要な耐塩性遺伝子を抑制する能力を失ったTaSPL6-Dの「自然突然変異体」TaSPL6-D-Inが存在した。研究チームは、独自に開発した分子支援育種法を用いて、農家の品種から現代の主要栽培品種「矮抗58」にTaSPL6-D-Inを迅速に導入し、塩類・アルカリ性土壌におけるコムギの収量を効果的に増加させた。

 中国工程院の院士(アカデミー会員)で山東省農業科学院研究員の趙振東(ちょう・しんとう)氏は、この研究はコムギの耐塩性分子育種と改良、さらには塩類・アルカリ耐性作物の開発にとって重要な設計目標を提供するとの認識を示した。(c)Xinhua News/AFPBB News