【6月5日 東方新報】月探査船「嫦娥6号(Chang’e-6)」の着陸機が2日朝、月の裏側への着陸という歴史的偉業を達成した。

「嫦娥6号」の着陸機は、中継通信衛星「鵲橋2号(Queqiao-2)」の支援を受けて、2日午前6時23分、月面で最も大きく、最も古く、最も深い盆地「南極エイトケン盆地(South Pole-Aitken Basin)」の指定ポイントに着陸した。

 これは中国の、そして世界で歴史上2番目の月の裏側への着陸となった。この探査機は、月と太陽系を取り巻く多くの謎を解明する手がかりを握っている。

 今後2日間で、探査機はロボットアームとドリルを使って地表や地下の物質を採取し、地球への帰還のための月周回軌道に乗る前に、容器に入れ密閉される。

 月の裏側の塵や岩石が回収されるのは今回が初めてだ。回収されたサンプルは、世界中の研究者に、月に関する疑問解決のための有用な鍵を提供し、さまざまな貴重な科学的な成果をもたらすだろう。

 中国国家航天局によると、嫦娥6号の複雑な着陸作業は5月30日、着陸準備のために着陸機が軌道船と再突入カプセルから分離されたところから始まった。そして2日の朝に全ての準備が整った後、着陸機は午前6時9分に降下を開始した。

 着陸機はメインエンジンで飛行速度を落としながら、降下中ずっと速度調整を続けた。特殊カメラで目的地を撮影し、画像をコンピューターに送信しながら最終的な着陸地点を決定し、地表の大きな岩などの危険物を特定しそれを避けるよう操縦された。

 月の上空約100メートルに到達すると、着陸機は降下を中断し、障害物の正確なレーザースキャンを行うために短時間ホバリングした後、さらにゆっくりと安定した速度で降下を続けた。

 そして最後の瞬間、地表から数メートル上空に達したところでメインエンジンを停止し、緩衝装置を作動させて月面にスムーズに着陸した。

 こうして「嫦娥6号」は、5年半前に初めて月の裏側に到達した「嫦娥4号(Chang’e-4)」に次いで2番目の探査船となった。着陸後すぐに、探査機の太陽電池パネルと指向性アンテナの初期チェックとセットアップが行われ、回収装置がサンプルを収集し始めた。

 中国宇宙局によると、「嫦娥6号」が搭載した二つのヨーロッパの科学装置(フランス国立宇宙研究センターのラドン測定装置と、スウェーデン宇宙物理研究所が欧州宇宙機関の支援を受けて開発した専用のマイナスイオン測定装置)が月面で稼働を開始した。

 世界で初めて月の裏側からサンプルを地球に持ち帰る「嫦娥6号」は、5月3日に海南省(Hainan)の「文昌宇宙発射センター」から「長征5号(Long March-5)」重装ロケットで打ち上げられ、8日に月周回軌道に入った。

 これまでの中国の月探査船と同様、8.35トンの「嫦娥6号」月探査船は、北京市に拠点を置く中国航天科技集団(CASC)の子会社、「中国空間技術研究院(CAST)」によって設計・製造され、軌道船、着陸機、上昇機、再突入カプセルの四つの主要コンポーネントで構成されている。

 中国の月探査プロジェクトの幹部は「月の裏側から採取したサンプルの物理的・化学的特性を分析することで、科学者たちは月と太陽系の起源と進化についての理解を深めることができるだろう。また今後の月の裏側での後続探査のために多くの経験を積むのにも役立つだろう」と、今回の成功を高く評価した。

「嫦娥4号」が2019年1月に南極「エイトケン盆地」に着陸するまで、この広大な月の裏側にはどの探査機も到達したことがなかった。しかし「嫦娥4号」は現地の調査はしたが、サンプル採取できていなかった。

 その後中国は、20年の冬に「嫦娥5号」を月の表側に着陸させ、米国アポロ時代以来初めてとなる1731グラムのサンプルを採取し、米国、旧ソ連に次いでサンプル採取に成功した3番目の国になっていた。

 この「嫦娥5号」の月サンプルから、中国の研究者は、「Changesite-(Y)」と名付けた月特有の6番目の新鉱物の発見を含め、多くの学術的な成果を上げた。

「嫦娥石」は月の「黄長石(メリライト)」に分類され、中国の科学者が発見し特定した最初の月の鉱物となった。(c)東方新報/AFPBB News