【5月9日 AFP】深刻な兵員不足に直面するウクライナの最高会議(議会)は8日、受刑者の軍への入隊を可能にする法案を可決した。議長とウォロディミル・ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領の署名を経て成立する。

 ウクライナ政府はロシア軍による受刑者動員を長らく批判し、同様の措置を取ることに反対してきたが、ロシア軍の進撃を受けてこれまでの方針をひるがえした。

 入隊は任意で、刑期が残り3年未満の受刑者のみに認められる。入隊した受刑者に恩赦は与えられず、仮釈放扱いとなる。

 2人以上の殺人、性的暴力、重大な汚職で服役している受刑者、元政府高官らは対象外となる。

 受刑者の権利擁護団体は受刑者の入隊を推進してきたが、採択された法案の文面には失望したとしている。

 同団体の代表は「この法律の背景にある考え方は支持しているが、採択された法案は差別的だ」と批判。「(入隊した)受刑者には休暇が与えられない。戦争が終わるまで戦い続けろという意味かは分からないが、刑期よりも長くなる可能性がある」と説明した。

 また、受刑者を集めた「特別部隊」の創設が、受刑者の虐待につながることも懸念されている。同代表は「これはロシアと同じ、血による贖罪(しょくざい)だ。戦う意志のある(受刑)者は一つの部隊に入れられ、肉のように扱われる」と指摘した。

 ロシアの民間軍事会社ワグネル(Wagner)は、動員した受刑者を次々と激戦地に投入し、「肉ひき機」になぞらえていたとされる。(c)AFP