【6月29日 AFP】都市部の公園や緑地は暑さを和らげ、生物多様性を高めるだけではなく、老化を遅らせる効果があるとする研究結果が28日、米科学誌サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)に発表された。緑地の近くに住んでいる人は、そうでない人に比べて生物学的に平均2.5歳若いという。

 米ノースウェスタン大学(Northwestern University)フェインバーグ医学院(Feinberg School of Medicine)博士研究員で、論文の主著者を務めたキエーズ・キム(Kyeezu Kim)氏は「緑の多い場所で暮らせば、実年齢より若くなれる」とAFPに語った。

「グリーンインフラの拡大が、公衆衛生の促進や健康格差の削減につながるという意味で、都市計画にとって重要な意義を持つ結果」だという。

 緑地との接触は、以前から循環器系の健康増進や死亡率の低下と関連付けられている。緑があることで身体活動や人との交流が増えることが考えられるが、公園の存在が細胞レベルでの老化を遅らせるのかどうかについては不明だった。

 研究チームは1986~2006年に米国のバーミンガム(Birmingham)、シカゴ、ミネアポリス(Minneapolis)、オークランド(Oakland)の4都市に住む白人と黒人900人以上を追跡調査をし、「メチル化」と呼ばれるDNAの化学反応を調べた。

 調査では、衛星画像を使って対象者の居住地と周囲の植生や公園との距離を評価。このデータと15年目と20年目に採取した血液サンプルから、各人の生物学的年齢を割り出した。統計モデルを構築する上では、教育、収入、喫煙歴などの行動因子といった変数の影響を排除した。

 その結果、居住地から半径5キロ以内の緑地率が30%の人は、20%の人に比べて生物学的に平均2.5歳若いことが分かった。

 また緑地へよく行く人の方が、そうでない人に比べて生物学的に黒人では1歳、白人では3歳若かった。

 キム氏はこうした差についてはさらなる研究が必要だとし、「他にもストレス、緑地の質、社会的支援といった要因が生物学的老化を遅らせる上で、緑地がもたらす恩恵の程度に影響しているかもしれない」と述べた。

 次の段階として、緑地と特定の健康状態との関連を調査する必要もあるかもしれないと付け加えた。緑が老化を抑制するメカニズムについても明確になっていないという。(c)AFP/Issam AHMED