【4月12日 AFP】フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領が台湾への対応をめぐり、欧州は米中いずれにも追随すべきではないと発言し、物議を醸している。専門家は西側に新たな混乱をもたらし、中国を勢いづかせる恐れがあるとみている。

 今月7日、3日間の訪中を終えて帰国したマクロン氏は、仏経済紙レゼコー(Les Echos)やニュースサイト「ポリティコ(Politico)」などに対し、台湾問題について「最悪なのは、欧州が米国の動きや中国の過剰反応に追随し、同調しなければならないと考えることだ」「(欧州は)自分たちとは関係のない世界の混乱や危機に巻き込まれるべきではない」との持論を展開した。

 この発言は、自立を貫こうとするフランスの長年の外交政策の一環とも、米中間の対立に欧州が巻き込まれることへの不安の表れとも解釈できる。だが、米国がウクライナ支援を通じて欧州の安全保障を維持するために数十億ドルを投じ、西側の結束が特に重要とされる時期だけに、欧米の多くの専門家や政治家から批判が相次いでいる。

 仏パリのシンクタンク「戦略研究財団(Foundation for Strategic Research)」で中国研究を専門とするアントワーヌ・ボンダズ(Antoine Bondaz)氏はAFPに、台湾をめぐる緊張の責任は中国ではなく、米国にあると言わんばかりの発言だったと指摘した。

「台湾支配をもくろむ『修正主義大国』(中国を指す)が現状を変更しようとしているにもかかわらず、不安定化の責任は米国にあると言うのか。責任の所在があべこべだ」と批判した。

 さらに、最も大きな影響は、仮に中国が台湾に侵攻して制圧するような事態になってもフランス、そしておそらく欧州は介入しないだろうと中国に思わせてしまうことにあるとし、「(中国への)抑止力を弱めることになる」と分析。「ウクライナから学ぶべき教訓があるとすれば、(ロシアのウラジーミル・)プーチン(Vladimir Putin)大統領を抑止できなかったことだ」と述べた。