【9月21日 東方新報】中国の無人探査機「嫦娥5号(Chang'e-5)」が月面から持ち帰った土壌サンプルから、新種の鉱物が見つかった。国際機関の認定を経て、中国の伝説で月に住む仙女の名にちなみ「嫦娥石」と名付けられた。人類が月で見つけた6種類目の鉱物で、新種の鉱物を発見したのは米国と旧ソ連に続き中国が3か国目となる。

 嫦娥5号は2020年12月17日、1731グラムの土壌サンプルを地球に持ち帰った。国家宇宙局は4回にわたり33研究機関に計53グラムのサンプルを配布し、分析を進めてきた。

 新種の鉱物は、リン酸塩鉱物の一種の柱状結晶体。中国の国有原子力企業・中国核工業集団(CNNC)北京地質研究所が、玄武岩の粒子の中から発見した。同研究所の黄志新(Huang Zhixin)研究員は「私たちは50ミリのサンプルを委託され、分析による消費は20ミリ以内に抑える契約でした。20ミリとは米1粒の重さ。くしゃみをすれば消えてしまう大きさですが、その中に20万個の粒子が含まれています」と説明する。

 研究チームはエックス線解析などを通じてサンプルの中から約10マイクロメートルの粒子を分離し、結晶体構造の解析に成功した。国際鉱物学連合(IMA)の新鉱物・命名・分類委員会(CNMNC)の投票を経て、新たな鉱物と確認された。

 また、国家宇宙局によると、土壌サンプルから「ヘリウム3」の濃度測定に初めて成功した。ヘリウム3は未来の発電燃料として期待されている物質だ。

 国家宇宙局宇宙工程センターの劉継忠(Liu Jizhong)主任は「マグマの分化や宇宙風化作用、バイオエネルギー変換などで最新の成果が得られており、月の起源と進化の過程、月資源の有効利用の探求、生命維持システムの実現に重要な示唆を与えている」と話し、「第5回目のサンプル配布を進めており、新たな研究成果を期待している」としている。

 月探査を巡り、中国は月面に研究基地を建設する計画を発表している。米国は有人月探査「アルテミス計画」を進めており、宇宙空間での競争は今後ますます激しくなりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News