■「中国共産党に欺かれた」

 ラウさんは一斉に拘束された52人の抗議活動指導者の一人だった。ラウさんらは、建物の壁の色にちなんで「ホワイトハウス」と呼ばれた施設に裁判も経ずに拘束された。囚人番号459となったラウさんは、突然解放されるまで13か月をそこで過ごした。

「いつ終わるのか、まったく分からなかった」とラウさんは振り返る。一度も拷問を受けたことはなく、今も中国に忠実な他の元収容者らが説明するようなゾッとする状況よりはましだったと話す。

 施設から出るとラウさんは、香港の左派組織から見放されたと感じた。ラウさんは拷問されたと証言することを拒んだため、組織から信頼されなくなったのだ。給料の良かった公務員の職を失った後にもらっていた組織からの支援も止められた。

 現在、車いすに座るラウさんは、若い時に急進的だったのは「中国共産党に欺かれ、香港左派によって目隠しされていた」ためだと話す。

 現在の民主派デモ隊の多くは、警察と対立することも辞さず、暴力的な戦略も肯定している。

 ラウさんは、長年の平和的な抗議活動が中国政府に対してほとんど効果がなかったため、香港人は選択肢がほぼ残されていないと感じるようになったと指摘する。

 現在の抗議活動の参加者らは「情報に通じた、教育を受けた一般市民が、普遍的な価値観を求め闘っている」と指摘。「人々は多くのものを壊したが、他に手段が残されていただろうか?」と問い掛けた。

 中国は「抵抗の鎮圧は今回で最後にしたいのだ」とラウさんは言う。

「しかしその後、香港は穏やかで安定した状態になるのだろうか。鎮圧に対して従順になるのだろうか。私はそうは思わない」 (c)AFP/Su Xinqi