【2月26日 AFP】韓国の富豪の娘がパラグライダーで偶然北朝鮮に不時着し、北朝鮮の礼儀正しく親切な軍人に助けられ恋に落ちるという、現実離れしたストーリーのテレビドラマが韓国で大ヒットした。

「愛の不時着(Crash Landing on You)」は現実にはあり得ない物語だが、北朝鮮の日常生活を正確に描写し、人気を集めた。

 朝鮮半島の分断は、韓国のドラマや映画によく登場するテーマだが、舞台のほぼ大部分が北朝鮮であるものは珍しい。ドラマには北朝鮮出身の脚本家と女優も関わっており、脱北者らは北朝鮮の描写の正確さに感心している。ある脱北者は「北朝鮮の村に戻ったような気分だった」と話す。

 韓国のケーブルテレビ局tvNが手掛けた「愛の不時着」は全16話で、2月中旬に最終回が放映された。

 韓国・忠南大学校(Chungnam National University)のユン・ソクチン(Yun Suk-jin)教授はドラマについて「北朝鮮に対する固定観念を変えた」と指摘する。

 またドラマは、2017年には衝突が懸念されるほどの緊張関係にあった朝鮮半島が、現在、足踏み状態ではあるものの、一連の首脳会談をへて急速に雪解けムードに変わったことの表れでもあるという。

 ユン氏は、このドラマは韓国と北朝鮮の緊張が高まっていたら実現しなかっただろうと話す。「実現したとしても好意的には受け取られなかった」

 ドラマは、韓国財閥の美しい相続人がパラグライダーを楽しんでいる最中に竜巻に巻き込まれ、非武装地帯(DMZ)を越えて北朝鮮に不時着した場面から始まる。

 ヒロインの女性は朝鮮人民軍高官の息子でハンサムな軍人に助けられ、二人は恋に落ちる。ヒーローである軍人は女性をかくまい保護するが、侵入者は投獄され、背信行為には厳罰を科す一党独裁国家である北朝鮮では全くもってあり得ないシナリオだ。

 さらに驚いたことに、女性が韓国に戻った後、軍人の男性は仲間数人と誰にも見つからずこっそり非武装地帯を越えてソウルに行き、彼女を悪者から救うのだ。