「馬は生きがい」元五輪選手の描く夢 政情不安続く中央アフリカ
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【3月17日 AFP】目を見張るような光景だ──中央アフリカの首都バンギで、土ぼこりが舞う道の真ん中を、車やバイクタクシー、崩れかけた建物の間を縫うように、栗毛の馬が優雅に進む。
馬に乗っているのは、スマイラ・ザカリア・メジーダ(Soumaila Zacharia Maidjida)さん。「ディダ」というニックネームで親しまれ、同国で知らない人はいない有名人だ。1992年のバルセロナ五輪で、陸上男子800メートルで国内記録を樹立。この記録は、今日も破られていない。
メジーダさんの夢は、馬術センターの設立だ。だが、その道のりは遠い。馬を養うため、メジーダさんは警備員として働いている。
バンギにはかつて、評判の高い馬術センターが二つあった。一つはフランス人移住者の「上流階級」向けで、もう一つは一般市民向けだった。
だが、クーデターに続く暴力や政情不安の連鎖で、バンギの二つの馬術センターは捨て置かれた。馬は盗まれ、海外に売られたり、市場の屋台で売られたりした。
メジーダさん自身も困窮し、食肉業者に馬を売ったこともあったが、何頭かは手元に残すことができた。メジーダさんは民兵隊が国の3分の2を支配している今でも、馬を買い付けに、隣国チャドとの国境まではるばる車を走らせる。
「馬は私の生きがいだ。馬なしでは生きていけない」。メジーダさんはそう語り、肩をすくめた。(c)AFP/Camille LAFFONT